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嘆きのピエタのkのネタバレレビュー・内容・結末

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ポスターが良いです。ミケランジェロのピエタをそのまま作中の登場人物に置き換えた秀逸なショット、不気味ながらおしゃれです。

天涯孤独の借金取り立て屋ガンドの元に突然現れた産みの母親。母親としての証拠は何一つないのに、ガンドは信じてしまいます。借金が返せなくて障害者になった男が母親を人質にしてガンドの家に押し寄せるシーン、男が逃げ去った後に追いかけようとするガンドを制止する母親。いやいやいやいや、逃したら報復でしょうが。ここで疑惑から確信に変わりましたね。そしたら、案の定冒頭の青年の母親ということで、つまりは復讐だったんですが、わりかし中盤あたりでわざと正体を明かす作りになっていたので、あまりそこは気にせず見てしまいました。

気になったのが、やはりカメラワーク。中盤あたり、厳密にはガンドが母親を犯すあたりでカメラワークが不自然になっていきました。ドキュメンタリーを意識したような不自然なズームと揺れる画面。初キム・ギドクなので、これが特徴なのかは判別できませんが、面白いと思いました。今作の序盤を見て最初に思ったのが、映像の質。とても良い機材を使った映像とは思えません。調べてみると、監督の自費製作らしくキャスト、スタッフは興行収入に応じた出来高払いということで、なかなか国際的な監督としては珍しい制作背景です(基本的に映画監督が映画だけで食えるのも珍しいですが)。それもあってなのか、映像の質が芳しくないわけで、そうなると問われるのは脚本の質と監督のセンス、力量です。結果的にはヴェネチア国際映画祭金獅子賞ですから、素晴らしいの一言に尽きますね。

これをもっと若い監督がやっていたら、日本は危なかったですよ。この身分であまり言うのもあれですが、言ってしまえば日本の若い才能は、苗として土に埋められ、肥料として良質な糞土を与えられたにもかかわらず、水にこだわるから栽培主は放ったらかしにしてしまう、こんな状況です。支援が無いのも問題ですが、育とうともしない植物は一生育ちません。日の目を見ようなどとは思わずに人任せで育とうとしています。自己への戒めも含めですが、才能一つで自分自身の将来はどうにでもなります。あとはその行動力と勇気次第です。
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