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嘆きのピエタのPのネタバレレビュー・内容・結末

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

天涯孤独の主人公。愛を知らない彼は、ヤミ金の取立屋として、貸し金に暴利をかけては債務者を障害者にしてその保険金を搾取するという、悪魔のような所業を続けていた。ある日彼の元に、母親だと名乗る人物が現れる。訝しむ彼だったが、次第に彼女を信じるようになり、やがて彼女のことを母として深く愛するようになる。しかし程なくして、彼女は姿を消してしまう。自分に恨みを持つ過去の債務者の誰かの仕業だと考えた彼は、彼等のもとを一人ずつ訪ねて母を捜索するが、その過程で、自分がいかに、家族を持つ人々に深い悲しみを与えてきたかということを痛感する。

この母だと名乗る人物は、本当は母などではなく、過去に主人公に障害者にされ、自害してしまった債務者の母だった。彼女は主人公に家族への愛(つまり自分への愛)を学ばせ、その上で、目の前でその家族を失わせる(つまり自分が誰かに殺されたかのようにみせる)ことで、主人公に復習を果たそうとしていたのだった。しかし、主人公との奇妙な共同生活の中で、家族の愛を知らずに育ち、そして初めてそれを知った彼に、計画を敢行することへの躊躇いを感じるようになる。

結局、母は復讐を敢行する。悲しみにくれる主人公は、母に生前頼まれた通り、松の木の下に彼女の遺体を埋めようとする。ところが穴を掘り進めていくと、母が家でずっと編んでいたセーターを来た男の死体が出てきた。全てを理解した彼は、債務者の一人の自動車の下に忍び込み、自ら『引き摺り回しの罰』を受ける。

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という様なストーリーであるが、序盤胸糞悪いシーン続きでちょっと辛い(直接的な描写ではないが)。暴力、レイプ、カニバリズム、女性の悲鳴…。また、いくら主人公が家族の愛に触れたからといって、ちょっと急に性格丸くなりすぎじゃない???という気もする。

息子のために両手を切って金に換えてくれと言っていた青年は、主人公には家族のために身を犠牲にする聖人のように見えたようだが、個人的には少々、狂気じみていて怖いよ!と思った。

カニバリズム(的)なシーンが2度あって印象深い。一つは、主人公が母に自分の肉を差し出し食べさせるシーン。もう一つは、母が自分の分身としてうなぎを置いていき、主人公が母を家に泊めた翌朝、母がそのうなぎを調理して食べるシーン。うなぎを母が食べるのは、母本人が迎え入れられて、もはや分身としてのうなぎが必要なくなったから?一つ目はよくわからん。
またカニバリズムではないが、主人公が生きた鶏やら兎やら調達して自分で調理して食べるところは、他者から搾取する人間という表現か(母と暮らすようになってからは魚を動物ではなく魚を調理している)。
母は兎(搾取される人間の象徴)を逃がすが、兎は自動車に轢かれて死んでしまう。ヤミ金に頼らなければ生きていけなかった債務者達の弱々しさを示しているようでもある。

日本でも『ヤミ金牛島くん』とか『土竜の唄』とか、あと『外道の歌』とか、ダメな市民とそれを食い物にするやつら、みたいな作品を最近よく見る気がするけど、始まったのはこの映画と同じくらいの時期だろうか?
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