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嘆きのピエタの教授のレビュー・感想・評価

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)
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一見すると異常に見える物語でも、そのように異常さを感じるほどに誇張したり飛躍したりして「表現」するからこそ、映画という表現に特化した感情を描けるのだ、というようなことを本作からは強く感じる。

だから、と言っては語弊があっても。
本作で描かれている出来事は、異常か?というと、僕はちっともそんなふうには思えない。

まず。ストーリーは誰が観てもシンプルに理解できるであろう。かなりエゲツめな借金取りのシンプルにキツイ取り立てをやっている主人公、イ・ジョンギンにチョ・ミンス演じるところの、母と名乗る女がやってきて…。
で、詳しくは書かないが、現実的には、普通にドン引きするような展開が起こるのだが。他者というものを受け入れる術や余地を持たない人物、というのを映画としてどう描くか(しかもこの手の人物はありがち)というときに、ここまでやるからこその「怒り」や「憎しみ」が表出するわけで、過剰さや飛躍が実に大きな効果を上げていると思う。

その上で「贖罪」に傾き、「人間性」を回復していけばいくほど、痛みや苦しみが倍増していくけれども、だからこそ「愛」であったり、「優しさ」であったり、人との「繋がり」は尊いのだ、という不条理が際立っていて素晴らしい。
素晴らしいけれど…痛々しくて苦し過ぎる。

直接的な暴力や残虐さはほとんどないが、
物語自体や、その展開、語り方の旨さで「最悪」な状況から浮かび上がるのは、シンプルに個にとっての尊厳の尊さであったり、他者の存在の大事さであったり、人間の中にあるどうしようもなく「利他的」な部分を炙り出していて素晴らしい。
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