嘆きのピエタ(2012)
三代映画祭の一つであるベネチア国際映画祭
その第69回で最高賞である金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督の作品
10日間という短期間で撮影された作品でもあり
まるでインディー作品ばりのスケジュール
この映画はソウル中心部の清渓川(チョンゲチョン)における変遷が描かれている
機械産業のメッカだった工業地帯の産業発展〜情報化社会へと変貌する前の姿を捉えている
そもそもこの作品の『嘆きのピエタ』というタイトルについて
「僕はイエス様が嫌い/19』でも書いたけど私はキリスト教には一切通じてない
だからざっくりとしたピエタ概要しか知らないけど、、
死に伏したイエスを膝に抱きかかえた聖母マリアがピエタと認識しているくらい
その絵画や彫像とかもピエタと捉えられる程度のレベルしか知らない
キム・ギドク監督は今作について
>母親が息子にどのような影響を与えるのか
その点に関心があるという部分でピエタに母親を感じストーリーの着想を得ていると話していた
借金取りの暴力による理不尽で残忍な世界観が描かれていて慈悲なき様子を常に見せつけられる
娯楽の世界観よりも資本主義によってもたらされる弊害が描かれている
『パラサイト 半地下の家族 』にも描かれる貧困問題や職や家族などの社会的問題を通じて他人事ではない部分をクローズアップしている
社会を掘り下げて芸術として現す表現は明らかに両作品に共通していると思う
現代社会において金銭や名誉を巡り
多くの人が傷つく社会の中において
人間と人間・家族と家族が幸せに暮らすことを夢見ていく作品でもある
登場人物達が "動物" のように漂って行動して生きている様子とストーリーに出てくる「ウナギ」や「ニワトリ」などの動物と重ね合わされている
自然な動物的本能も内在しつつ
人間を"動物"という記号に当てはめて
広範的な意味で同じ生き物と捉えている
食べる為に生きること
真っ当な暮らしに思いを馳せること
監督は人間が自然な姿に戻るのか
システムに適応する人間を描くか
その部分を計算して描いている
ラストにおける苦しみ抜いて死ぬ姿の描き方についてこだわりを見せていて
>自殺でも他殺でもない神への貢ぎ物を捧げる死
その芸術性が印象的に描かれている
寂しさとも虚無感とも異なる妙な感情に踊らされつつ
死によって導かれる あの世に引きずられるかの如く進むラストはもの凄い迫力がある
絶望と暗黒の果てにあの1本の血の線が
観衆をどこまでも導いていて
「あぁ…これは賞を受賞するよなぁ…」
って問答無用な感覚が観終わってから
ボンヤリ・ジワジワ押し寄せてきた
韓国映画の力強さを感じた作品