映画ネズミ

真夏の方程式の映画ネズミのレビュー・感想・評価

真夏の方程式(2013年製作の映画)
4.5
向いている人:①美しい映像、カッコいい映像が見たい人
       ②「夏」を感じられる映画が見たい人

 更新が1日空いてしまいました。ごめんなさい。Netflixで配信が始まったので、再見しました。この映画、なぜか嫌いになれないんですよね。

 「探偵ガリレオ」こと物理学者・湯川学は、海底鉱物資源開発事業のアドバイザーとして、玻璃ヶ浦という町を訪れる。宿泊した旅館で、ひとりの少年・恭平と出会う。恭平は、夏休みを、伯母一家の経営する旅館で過ごしていた。そんなある日、宿泊客・塚原が死体で発見される。

福山雅治さん主演『ガリレオ』シリーズの劇場版第2作です。

 東野圭吾さんの原作『探偵ガリレオ』シリーズは、物理学者・湯川と親友の刑事・草薙が事件を解決していく、サクッと読めて科学の勉強もできるシャーロック・ホームズという趣でした。

 ドラマシリーズは、刑事役を女性キャストに置き換え、福山さんが、キザったいキャラを生かしてさっそうと謎を解く、月9ドラマならではの軽さが魅力でした。

 前作『容疑者Xの献身』は、ドラマシリーズをベースにしながら、堤真一さん、松雪康子さんの重厚な演技合戦が魅力として加わりました。

 この映画は、原作とも、ドラマシリーズとも、前作の劇場版とも違うと思います。


 この映画の魅力は、映像です。

 カッコいい映像です。

 それもそのはず、本作カメラマン・撮影監督は、柳島克己さん。ベテランです。
 代表作は『ソナチネ』『キッズ・リターン』などの北野武監督作。
 近年でも、『夢売るふたり』で見事な撮影を披露していました。

 特に、青い海底の場面が素晴らしいです! 舞台となる町のロケーションも最高ですね!

 全体的には、とても静かな映画で、派手な見せ場はほとんどありません。

 劇的な展開!はほとんど起こらない映画です。

 その分、湯川と少年のやり取りが面白いし(子役がいかにもいけ好かない少年でもなく、かといって物わかりが良すぎるいい子ちゃんでもないバランスがイイ)、ドラマでは相棒役だった吉高由里子とのやり取りも、全体のトーンを崩していなくて、テレビドラマの映画化にありがちな、場面のトーンが違うちぐはぐな感じは全くありません。

 旅館の雰囲気もいいですね!

 この映画のいちばん派手な見せ場は、ペットボトルロケットを飛ばすシーンです。何と、これが映画全体のテーマを表していることが、ラストに明らかになります。序盤のセリフも、まさか伏線になっているとは……。細かすぎるんですけど、見事です。

 全体としては、「刺激的で、ビターな夏休み」という感じ。『スタンド・バイ・ミー』とはまた違った夏休み映画だと思います。ペットボトルロケット、飛ばしてみたくなりました。

 演者も素晴らしいです。杏さんの泳ぎ姿もキレイで、前田吟&風吹ジュンの夫婦も、本当にそう見えます。白竜さんは、クレジットが出るまで気づきませんでした。すごくイメージと違う役でしたね。

 結局、事件には悲しい真相が隠されているのですが、そこは賛否分かれるでしょう。自分としては、どんな理由があろうと、あの人にああいうことをさせては絶対にダメ!だと思います。真犯人はマジ最低!です。

 ということで、ストーリーは胸糞悪いんですけど、その分美しい映像と繊細な演技で魅力的なお話に見せているというのは、スゴイと思いました。

 最後の湯川と少年のやり取りも素晴らしいし(あのように言ってくれる大人がいると、救われますよね)、いつもの「ガリレオ」のテーマ曲が流れるところのキレ味も最高! ちょっと早いですけど、いい夏休みでしたよ。

 それにしても、西谷弘監督、2作目での取り返しがスゴイです。『アマルフィ』より『アンダルシア』、『容疑者X』より『真夏の方程式』と面白くなっていきます。

 2010年代でも、トップレベルで映像の美しいメジャー作品だと思います。

 これから、「列車のパンタグラフ」=『真夏の方程式』になりそうです。地味なお話ですが、様々な感情を湧き起こされる、いい映画でした。ヒューマンドラマ系の映画が見たい人は、是非!
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