静かな鳥

パシフィック・リムの静かな鳥のレビュー・感想・評価

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
3.5
「KAIJU」が劇中での共通言語になっている事からも分かる様に、ギレルモ・デル・トロだからこそ生み出せたモンスター映画。ストーリーは正直言ってありふれているが、だからこそクライマックスは淀みなくぶっちぎりに盛り上がれるし好きになってしまう。

侵略モノで見飽きた感じのある冒頭のニュース映像等の継ぎ接ぎで構成された世界説明(でも初っ端からゴールデン・ゲート・ブリッジの破壊シーンがあるのは良い)。どうしても寒く感じるコメディ描写。唐突に殴り合って喧嘩し始めるマッチョ達。森マコのずっとローリーに対してモジモジしている乙女なキャラ(ローリーの部屋をこっそり覗くのとかこっちが気恥ずかしい。菊地凛子は悪くないのだけれど)。日本語の台詞が所々に使われているのも日本リスペクトの1つなのかもしれないが、個人的には違和感を禁じ得ない。

しかし、そんな不満点を勢いよく吹き飛ばし、ど直球なベタさを「王道」の強み・面白さへと反転させる後半怒涛の怪獣バトルシーンが素晴らしい。イェーガーが出動するシーンの神々しさ! 否応無くアガってしまう。怪獣の造形はデルトロ印って感じだし、でかいモン同士が闘うのに建物の被害は眼中に無いと言わんばかりに、次々と無惨に破壊されるビル群も逆に潔く思ってしまう。
また、その建物内のオフィスをイェーガーの拳が突き抜けていって、イスにコツンと当たりニュートンのゆりかごが揺れる…といった"マクロとミクロのギャップ"ギャグも愉しい。海から突如、巨大怪獣が出現するところとか、その怪獣が威嚇する様に翼を広げる時のド迫力とかも最高ではないでしょうか。ラミン・ジャヴァディによるあのテーマ曲がかかるタイミングもバッチリ。

また、イェーガーを操縦するにはパイロットが2人必要なこと、その2人の脳をドリフトさせて闘うという独自の設定が効いている気がした。辛い記憶をドリフトによって鮮明に思い出し戦闘の連携が乱れるというシーンで、同時に登場人物達のドラマを描く事に成功している。そんな2人が協力し哀しい記憶を乗り越え、怪獣に立ち向かうのがアツい。加えて、そのドリフトという行為によってニュート&ハーマンのコンビが怪獣の弱点を見つけたり…と物語の展開に密接に絡んでくるのも良いところ。

あと、お調子者のオタクのニュートも見ていて楽しい。闇商人のハンニバル・チャウに怪獣の脳を何に使うのか聞かれ、「極秘だ」「言えない」と言いながらやっぱ喋っちゃう所とか、怪獣を目の前にして眼鏡をかける手がオーバーにブルブル震える所とか良かった。
サブのイェーガーがあんまり活躍シーンの無いまま出番を終えてしまうのが惜しいとか、終盤空に飛んでいっちゃったりするのが若干インフレな気がしないでもない。が、誰でも童心に返る事ができる素敵な映画である事も間違いないと思う。
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