鋼鉄隊長

パシフィック・リムの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
4.5
購入したDVDで鑑賞。

【あらすじ】
2013年、太平洋海底に異次元と繋がる裂け目が出現。そこから多数の怪獣が現れ街を襲撃した。それに対抗するべく人類は二人乗りの巨大人型ロボット「イェーガー」を建造した…。

先日(5/11)「金曜ロードSHOW!」にて放送されたTV版は中々良かった。TV放送は観たいシーンがカットされていることが多いが、この前のはちゃんとハンニバル・チャウのその後が放送されていた! このシーン好きなんだよなぁ
ただ、重要な所がカットされているではないか! そう、「献辞」だ。この映画の最後には「この映画をモンスターマスター、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」と表示される。この一文にはデル・トロ監督の熱い怪獣愛が詰まっている。これを語らずに作品を評価することは出来ない。
『パシフィック・リム』は数多の怪獣映画を尊敬して捧げられた作品だ。この映画にはモンスターマスターたちの魂が脈々と受け継がれている。例えば初戦の敵「ナイフヘッド」。特徴的な頭部から見てわかるように、モデルは『ガメラ対大悪獣ギロン』(1969)の怪獣ギロンである。その他にも戦闘に巻き込まれる漁船や魚群探知機に映る動く島など、怪獣映画を「わかっている」演出は多い。また香港決戦での相手、カテゴリー4の「レザーバック」と「オオタチ」はその最たる例である。レザーバックは、その見た目とゴリラのボスを意味する「シルバーバック」に因んだ名前から間違いなく『キングコング』(1933)をイメージした怪獣であることがわかる。背中から電磁衝撃波を出して電子機器を破壊する攻撃方法も、機械文明から孤立した存在であったキングコングを暗示しているようだ。つまりこの怪獣は、『キングコング』とそのクリエイター「特撮の父」ことウィリス・オブライエンを意味しているのだ。そしてオオタチには「特撮の神様」円谷英二が世に送り出した「東宝特撮」の名作たちが凝縮されている。伊福部音楽を思わせる重厚なBGMと共に香港に上陸したオオタチの背中は、『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965)に登場するバラゴンのようにヒダが重なり合っている。翼を広げる姿は『空の大怪獣ラドン』(1956)にも見える(映画秘宝ではギャオスから着想を得たとの解説もある)。ビル群の中に姿を隠す演出は、『GODZILLA』(1998)のオマージュか。東宝の看板怪獣ゴジラをあえて直接オマージュせずに、評価の低かったエメリッヒ版を持ってくるのが怪獣オタクらしい。ちなみに最終決戦に参戦したライジュウは、花弁状に開閉する外骨格が付いた頭部から『ウルトラマン』(1966)に登場したウラン怪獣ガボラを彷彿とさせるが、ガボラとはバラゴンの着ぐるみを改造して作られた怪獣であり、そんな怪獣を登場させるセンスもまたオタク心をくすぐる。
ここまで語れば、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎が献辞で取り上げられた理由が見えてくる。彼ら二人だけは映画の中で描き切られていないからだ。たしかに献辞に記されたモンスターマスターから着想を得たシーンはある。怪獣を送り込んでくる宇宙人「プリカーサー」の見た目は『H・G・ウェルズのSF月世界探検』(1964)に登場したインセクトムーンマンに似ている(設定だけ見ると『ウルトラマンA』(1972)の異次元人ヤプールにも似てる)。とは言え、その活躍は非常に少ない。だからこそ監督は出したくても出せなかった二人の巨匠をエンドロール後に出したのだろう。つまり献辞も含めないと監督の怪獣愛は全て伝わらないのだ。
本当にこの作品は怪獣を理解してくれている。最後の最後に史上最大(カテゴリー5)の怪獣「スラターン」を何にも無い海底に召喚するというミス(大きさが伝わらないから)は犯しているが、まぁそれは良い。映画界の最前線でこんな素晴らしい方が映画を作ってくれるだけで、嬉しくて嬉しくて堪らない!!