麩

くちづけの麩のレビュー・感想・評価

くちづけ(2013年製作の映画)
3.0
ひと昔前の小劇場界で大人気だった劇団「東京セレソンデラックス」の代表作を映画化したもの。
セレソンデラックスの脚本家、宅間孝行の脚本がわりと好きなので、本当は舞台版を観たかったけどもう観れないし…映画で観てみた。
宅間孝行の本って「ザ王道」で、舞台劇のセオリーを外さずに
・しっかり起承転結・笑いあり涙あり・全ての伏線がはっきり示されきっちり回収・最後は泣ける展開をたたみかける みたいな、昔ながらの人情劇〜って感じがすごいんだけど
やっぱ脚本がちゃんとうまくて毎回きちんと感動するんだよなーー

くちづけ、ワンシチュエーションで展開していく感じとか
舞台の出捌けが見える感じとか
物語が展開していく時に誰かが入ってきて物事を連れてくる感じとか
映画ではなかなか見ない説明台詞とか、
映画なのに舞台を観てるみたいな感覚になる
なかなか珍しい鑑賞体験だった。
舞台劇を映画化したものって沢山あるけど
どれもやっぱり、台詞で説明してたところを映像で説明するようにしてたり、
舞台のミザンスみたいなのをカメラワークが担ってくれてたりして、ちゃんと「映画版」になってるんだけど
これは前半ほんとに「舞台のDVD観てるみたい!」ってなる不思議な作品だった
後半はわりとカメラワークや暗転等の演出が話を進めてくようになるから、映画っぽくなっていくんだけど

あと、件のラストシーンは
カメラでぐるぐるぐる〜って対象の周りを周りながら映してくカメラワークも
声がぼやけていって現実と虚構の狭間みたいになる演出も
なんかもったいなかった…
竹中直人がもがき苦しみながら遂行するさまをはっきりと映して欲しかったな〜
李相日の「怒り」とか「悪人」みたいなクライマックスシーンにしてほしかった
竹中直人のあの瞬間の芝居をもっとちゃんとみたい

障害者の扱い方とか、性犯罪の扱い方とか、もっともっとセンシティブになれる部分はそりゃたくさんあるんだけど
良い舞台ってそれら全てを完璧に叶えることでもないんだよなーというのと
この作品に関しては、宅間孝行の届けたいことや狙いがはっきりと見えてて、その目的のためだというのがわかるから、それ以外を取り立ててあーだこーだいうのはまた違うのかなぁという気がする
堤幸彦監督がセレソンデラックスの舞台版を観て、「これを“そのまま”映画にしたい!」って言って作られたものらしいから
これがこの作品のあるべき姿かなーとも思う
麩