カツマ

インポッシブルのカツマのレビュー・感想・評価

インポッシブル(2012年製作の映画)
4.0
恐怖と感動が波の強弱のように何度も押し寄せてくる。為すすべもなく津波に呑み込まれていく恐るべき自然描写に戦慄。これは2004年のスマトラ島沖地震の津波被害を扱った、奇跡の一握りのような実話を描いた作品だ。土砂まみれの荒波の中に放り込まれたら、もはやその生死を分けるのは運しかないのか。その映像としての圧倒的リアリティは逃げ出したくなるほどに悲痛で、とてもじゃないが実話ベースの話とは思えないほどだった。
スパイダーマンでもお馴染みトム・ホランドの健気な頑張りは何度も胸を打つ。
監督はジュラシックワールド続編の監督にも抜擢されたJ・A・バヨナ。『永遠の子ども達』でデビューして、なんと2作品めにしてこのクオリティだ。

クリスマス休暇でスマトラ島沖のビーチへとバカンスにやってきたマリアとヘンリー夫妻と3人の息子たち。暖かな気候の中、家族はクリスマスを満喫し、プールサイドで遊ぶ息子たちは楽しそうだ。
だが、バカンスに不似合いな轟音がビーチを震わせ、突如プールサイドは津波に呑み込まれた!マリアは津波に呑まれながら、長男ルーカスを発見し、二人で何とか沖へと向かって泥水の中を進む。その途中にマリアは脚に甚大な怪我を負うが、現地の人々に助けられ、何とか病院へと搬送された。いまだ夫とあと二人の息子の安否が分からぬまま。家族は離れ離れになってしまったのだ・・。

前述したトム・ホランドも含め、ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガーら俳優陣の鬼気迫る熱演が、物語に実話としての息吹を吹き込んでいる。特に泥水の中、洗濯機にかけられたかのようにグシャグシャに振り回されながらも生き延びるマリア役ナオミ・ワッツは迫真の演技だ。

ここ日本でも東日本大震災という未曾有の大災害が起こっただけに、恐るべき津波の描写を見ると恐怖が先行してしまうが、それらを乗り越えた先にあるからこそ、ラストの感動は大きなものだった。
J・A・バヨナは恐らくジュラシックワールドで大きくハリウッドでの地位を確立すると思うが、すでに彼の作品なら間違いないと思えるほど、信頼度の高い監督になっているということを確信させる作品だった。
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