電気羊

少年Hの電気羊のレビュー・感想・評価

少年H(2012年製作の映画)
3.3
第二次世界大戦中の日本。父親はテーラー、母親はクリスチャンの家庭に育った絵を描くことが好きな主人公のハジメ=少年Hは、海岸でスケッチしたり、欧米の有名画家の模写をしたりしていた。

戦争は終局に入り本土決戦も間近になると、主人公の通う学校でも少年兵としての軍事教練を受けることに。
そんなある日、外国人とも取引が多かった父親がスパイ容疑で陸軍の拷問を受ける。結果、容疑なしで放免されるのだが、主人公は理不尽な軍人に対して憤る。

そして本土決戦に破れ焼け野原となった東京で天皇陛下の玉音放送を聞き、日本が敗れたことを知るのだが。

疎開していた主人公の妹が田舎から白米と食料を持って東京へと戻って来る。住んでいるバラックの長屋で家族全員で食事をしていると、その様子を壁の隙間から伺った隣の部屋の一家から「お腹が空いた」という声が聞こえてくる。
母親は隣人愛に基づき、少ない食料から差し入れをしようとするが、主人公は、癖になるから止めろと正論を唱える。父親へ意見を伺うが父親は黙して語らずを貫く。

街へ出た少年は、学校に通っていた頃、自分に辛く当たっていた上官が頭をぺこぺこ下げながら闇市で一般市民として質屋や修理屋を営んでいるのを見て、軍人としての覚悟を説いていたのは何だったのかとわだかまりを覚える。
そのことを父親に話すと、父親は人々は生きるためにいろんな事情を抱えている。お前も自ら考えて生きろと諭す。

少年は、食料を分け与える母親や、かつての上官の姿から生きていくのは正論だけでは成り立たないことを悟るのであった。

正論や理詰めで話すことを得意に語るバカがいるが、そんなものは本道では役に立たない。
人を動かすのに必要なのもの。それは仁か利なんだよな。
電気羊

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