きゃしー

少年Hのきゃしーのレビュー・感想・評価

少年H(2012年製作の映画)
3.8
日本の戦争映画は無限にある。
その中でも選ばれ、鑑賞される価値ある作品だろう。

リアルな爆撃や人情ドラマを求めるならば、お門違い。

本作において刮目すべきは、少年Hとその父(水谷豊)との信念のぶつかり合いだ。

「憎しみは憎しみを生む。」
が、戦時中、正論は力を持つものによって抑圧される。
当たり前の考えを持つことは極めて簡単なようで、簡単ではなかったのだ。
…そんなこと、もう随分前から分かったつもりでいたはずなのに、分かってなどいなかったのだと痛切に感じた。

どこにでもいるようでどこにもいない少年の叫びに共感し、皆がおかしくなる戦時中に、どれだけ自分を保てるのか、問いかけられているような気がした。

当たり前を貫けない「ワカメ」達の姿をどうか一度見て欲しい。
決して夢物語ではない日本の戦争について、若者世代に考察のきっかけを作るような作品だ。

〈覚書〉
・これが焼け野原か、と。
・逞しくなるはじめ
・終戦後の水谷豊の渋い表情
・「戦争はいつか必ず終わる。そのときに、恥ずかしい人間になってちゃいけないよ。」
きゃしー

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