和桜

リアリティーの和桜のレビュー・感想・評価

リアリティー(2012年製作の映画)
4.3
人を笑わせるのが好きな男は、仲間たちからリアリティ番組のオーディションに出るよう薦められる。照れながらも渋々受けてみると、予想以上に手応えを感じて合格を確信してしまう。周囲にも内定したかのように振る舞うが、待てども待てどもスタジオには呼ばれず、次第に周りの人間たちが番組スタッフとして自分を監視していると思い込み始める。

ドキュメンタリータッチの『ゴモラ』で現実を、今作で虚構を描きながら、両者の狭間を彷徨い続けているマッテオ・ガローネ監督作。
この映画はまさにイタリア版『キング・オブ・コメディ』とさえ思えてくる。レビュー点数はどこも軒並み低いけど、これぞイタリア映画!これぞガローネ!な個人的な評価は高めな作品。

密かに抱いていた夢が目の前に現れ、掴んだと思ったら幻だった。普通ならそれで終わる話だけど、今作の主人公はその幻に囚われてしまう。
ホームレスを邪険にして心証を悪くしたせいだと、自分の財産の全てを貧者に分け与え始める様子。全体的にイタリアらしい宗教的なモチーフが多め。神である番組スタッフに見られているが故に善行を行い、しかも番組スタッフなんてどこにもいないというのは皮肉が過ぎる。

さらに現代のメディアからSNSを見越したような、現実を忘れて虚構や偶像に埋没していく姿を淡々と見せつけられる。これは極端な例だけど、制作当時以上に当てはまる部分は増えているように感じるし、映画という虚構好きなら重ねてしまう部分もあるはず。ラストなんて神と観客の視点が混ざり合う完璧な締め方だった。
日本人から見るとこのリアリティ番組が『テラスハウス』と似通ってるのも面白い。
和桜

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