すずき

まぼろしの市街戦のすずきのレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
4.1
1918年、ドイツ軍占領下のフランスのとある町。
迫るイギリス軍に対し、ドイツ軍は大量の時限爆弾を残し町を放棄。
そして夜中12時に町もろともイギリス軍をふっ飛ばす作戦を立てる。
その事を事前に察知したイギリス軍将校は、フランス語が出来るというだけで、通信兵プランピックに単身、町への潜入と爆弾解除の特務を命じた。
全ての住民が非難した町に残るは、精神病院に入院する患者のみ。
プランピックは町に残っていたドイツ兵に見つかった際、患者の振りをしてやり過ごすが、ひょんな事から患者達に王様と崇められてしまう…

フランスの一風変わったコメディ映画。
古い映画だけど、登場人物のほとんどが精神病患者というちょっとヤバめな設定と、シニカルな社会風刺・戦争風刺、そして何処となくファンタジックなビジュアルが、今なお斬新でオリジナリティが光る。

病院の檻の中から無人の街に出て、好き勝手する患者達は「ゾンビ」のスーパーマーケットのシーンの様で楽しい。
しかし、街の人の残した衣服や化粧等を拝借して、「なりたかった自分」になるのはちょっと切なくもある。
そもそもこの患者達、そこまで頭おかしい人達に見えないのよね。みんなやけに芸達者だし。

逆に軍隊の人達の方はマトモなハズなのに、彼らもコメディ的なキャラに描かれ過ぎてて、あんましマトモじゃないw
映画のテーマからその意図は分かるんだけど、「三馬鹿大将」みたいなキャラクターが出てくるのは、ちとクドいか。

患者達のリーダー格の「公爵」が、一言だけ真理を言い当てるセリフがあるんだけどゾッとした。
幻想の中で生きている人達と、現実の中で殺し合う人達、果たして正常なのはどちらなのか。

あとこの映画、吹替が超豪華!
主役は富山敬さんでやっぱイイ声。
脇役の広川太一郎さん、富田耕生さんあたりは、絶対アドリブ言ってるよね…
そのせいで、ちょっと映画本来の内容以上に、お笑い感が過ぎる気もしたが、それもまた一興。