ひこくろ

ホーリー・モーターズのひこくろのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
4.7
意味がわからないけれど圧倒的に面白いという映画がこの世にはごく稀にある。
これは間違いなくそういう一本だと思う。
主人公がオスカーということはわかる。彼がいろいろな人生を演じているらしいのもまだわかる。
でも、それ以上のことがまったくわからない。
彼が演じているのが、架空の人生なのか、本当の別の人生なのか。
なぜ、彼はそんなことをしているのか。そこに何か意味があるのか。
映画は何も答えてはくれない。
ただ、彼が演じる人生だけがギラギラと目に焼きつく。

彼が演じている人生はおそらくはすべてが「芝居」だ。
その人生の中では死すらも簡単に噓になり覆る。
でも、だとしたら本当の人生とは何なのか。
彼は演じていない現実で、かつての恋人と再会する。それは紛れもなく本当の人生のように見える。
けれど、その場で彼女はミュージカルばりに歌いはじめる。
まるで「これは芝居なのよ」と言わんばかりにだ。
本当も嘘もごっちゃになって、何がなんだかわからない。
もう、眩暈が止まらず、頭がクラクラした。
映画ってこんなにも自由なものだったんだ、と強く思わされた。
ひこくろ

ひこくろ