「黒い天使」と呼ばれた実在の犯罪者の映画とは別物です。
原作は、アルフレッド・ヒッチコック監督で映画化された『裏窓』で知られるサスペンス小説の第一人者、コーネル・ウールリッチさん(ウィリアム・アイリッシュ、ジョージ・ホプリーなどの名でも知られる)。
主演はダン・デュリエ。彼の主演映画は全て日本未公開。だけど立川談志師匠ご贔屓のダン・デュリエ。ヒロインはB級女優ジューン・ヴィンセント(失礼)。あとピーター・ローレね。『M』で怪演してましたよね。低予算ながらなかなかに傑作の気配漂うフィルム・ノワールか…
これは期待大
まずね、カメラワーク。ドリーズームほどではないけれど、これがまた面白い。失恋もほどほどに、でかいブローチと明らかなる誤認逮捕の殺人事件。ピーターローレに「M・M」とかいうニヤリ。ふむ。なかなかに楽しい。
ハートブレイク・マーティン・ブレア、いいキャラしてますね。どんどん面白くなっていく。殺された女を憎む男と夫の無実を信じる妻、その出会いは最悪だけど、息の合った奇妙な犯人探しが面白い。愛の想い出は一筋の光明を手繰り寄せ、やがてプロ顔負けの潜入捜査が始まります。ジューン・ヴィンセントの歌がいい。すごくいいね。誰?B級女優なんて言ったの?失礼な!!(怒)
男と女、サスペンスに揺れ動く情動、危険なスパイスにピアノソナタ第14番「月光」の音色
なんだろう
楽しい
どこか悲しくもあり、ちょっぴり切なくなるのは何故だろう。ファム・ファタールの存在がこの物語にやりきれない影を落とすのです。終わらないレコードの幾度も繰り返す失恋のメロディが、この映画になんとも言えない余韻を遺してくれるのです。