馮美梅

パコと魔法の絵本の馮美梅のネタバレレビュー・内容・結末

パコと魔法の絵本(2008年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

あの個性的な出演者たちが作品の中でお互いを食い潰すことなくそれぞれの個性として存在してるということがそれだけでも中島監督が凄いなと(笑)

そして小池栄子さん恐るべし…そして役所光司さんの圧倒的な表現力、安部サダヲさんのナンセンスさ…加瀬亮さんの飄々さ、國村隼さん、初めての女装なんて信じられな~い!違和感のなさ、上川隆也さんのチャーミングなこと、妻夫木聡の恐ろしいほどのキモさ…そしてアヤカちゃんがとにかくかわいい…

コミュニケーションが難しい主人公たちの不器用な生き方の変化をいつも作品で表現してくれる中島監督が今回もまた大貫という人物がパコという記憶が1日すると忘れてしまう少女と出会う事で自分の中の変化を通して人間の「本当の強さとは」というメッセージを投げかけてくれているように感じました。(下妻物語を見た時には「本当の幸せって?」というメッセージを感じたし)

一代で会社を起こし大企業にした大貫は人とのコミュニケーションを好まない「お前が私の名前を知っているというだけで腹が立つ」と言い、ひどいことばかり言っていたがパコという少女に会ってパコが1日すると前日の記憶を忘れてしまうということを聞かされショックを受ける。そしてそんなパコが自分の手のぬくもりを覚えてくれていたという事に今まで人を拒否していたのにパコのために彼女の心に記憶してもらえる何かをしたいと思うようになる。

浅野先生に「自分は強い人間だと思っていたのにどうして涙が出てくるんだろう?どうしたらこの涙を止めることができるのか?」と尋ねるといつもファンタジーなイメージの浅野先生は静かに大貫に治療(涙の止め方)をしてくれた。このシーンは見ててジーンとしてきます。そしてそんな大貫が今度は龍門寺に涙の止め方の処方を教えてあげるのです。

大貫は周囲に対して他人を拒否して虚勢を張る事それが自分の強さだと思って生きてきたのにパコに出会い、涙することで涙することは弱いことではなく、人の強さとは自分の素直な感情(いいことも悪いことも)と向き合うことだということを知ったんだと思う。

入院患者それぞれも表面の傷だけではなくそれぞれ自分自身と向き合うことが難しい人たち、そんな人たちが大貫の提案でパコのために行動を起こそうと頑張る。

途中、劇中劇が始まる少し前に妻夫木君のシーンがあるんだけどこれが結構見ててしんどかった。そこまで引っ張らなくてもいいんじゃないと思ったりもしたけど…。

皆で「ガマ王子対ザリガニ魔人」の劇が始まった途端テンポが良くなって観ている私もぐいぐいと劇に引き込まれていったし、本当にガマ王子の役所さんがカッコいいし、妻夫木君のザリガニ魔人が本当に恐ろしいくらいキモチュ悪いんでちゅ。(なんでこんな表現なのかは映画を見たら理解してもらえますアハハ)とにかく出演者が楽しそうに見えるんです。(撮影自体大変だと思います)

最後ザリガニ王子と戦ったガマ王子が力尽きるシーン、絵本のガマ王子とCGのガマ王子の姿が少しウルウルしそうになったけれど、その後の展開が…。パコとガマ王子の水のシーンが本当に印象的でした。

最後の最後まで理解不能だったのが安部サダヲさん演じる堀米。

最初、患者かな?それとも看護師?でも誰も彼の事を知らないみたいだし…とにかくナンセンスな人物を演じていますが最後の最後にそのナンセンスの理由がわかります(なるほどねぇ~って感じですがやはりナンセンス)

子供も大人も楽しめるからこれもぜひ小さな子供さんがいる人は一緒に行って映画を見た後に色々お話してもらいたい作品ですね。

アヤカちゃんが本当に可愛いし、実力派俳優達が素敵な演技をして居てみごたえ満点ですよ(日本の俳優の素晴らしさを再認識します)
馮美梅

馮美梅