垂直落下式サミング

アイム・ヒアの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

アイム・ヒア(2010年製作の映画)
4.5
孤独で心優しいロボットの青年がドジで大らかなロボットの女性に恋をし、彼女のためにすべてを捧げていく31分の短編映画。
藤子不二雄のSF漫画のような世界観で、手作り風のロボットコスチューム、映像・音楽ともにソフトテイストなので、とっつきやすく感情移入しやすい。
戯画化した短編でしかやれない内容というわけではないが、人と違って手足が無くとも生きてゆける彼等には、障害を負ってしまってもきっとまだ救いがある。パーツ交換可能のロボットだからこそ、必ずしも取り返しのつかない悲劇にあらずのところがあるだろう。
一方的な献身による自己犠牲は、よく考えれば自傷的な快楽といえる。「足りないならあげるよ」と全部を渡してしまう彼は滑稽で、やむを得ないとはいえ彼のパーツと結合していく彼女もまた彼への好意が倒錯していると、屈折したもの同士のラブストーリーととらえることができる。
スパイク・ジョーンズ、素敵な恋愛を撮る人、前妻ソフィア・コッポラ、キャメロン・ディアスとロストイントランスレーション、菊地凛子と破局、ジャッカスのやつらと友達、さまよえる男でも愛を描くことはできる。芸術は偉大。