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鉄路の男の3104のレビュー・感想・評価

鉄路の男(1957年製作の映画)
4.1
夭折が惜しまれるポーランドの映画監督、アンジェイ・ムンクの長編第1作。

1人の老機関士が汽車に撥ねられ命を落とす。
その原因、真相を、事件と彼にまつわる人達の供述や回想を元に描くという形式。
映画の構造は黒澤映画『羅生門』によく似ている。
関係者(彼の元部下で現上司、現部下、事故の元になった信号塔の係)の意見が食い違う。観る側には語り手が変わるごとに老機関士の新たなイメージ、それまで見えなかった一面が提示される。とはいえなかなかこの老機関士オジェホフスキに共感や感情移入をすることができないまま物語は進んでゆく。
しかしすべての「意見」が出そろった映画終盤。“ひとつの見解”として浮かび上がる彼の姿、彼の取った行動に対し、不意に心を揺さぶられてしまう。
映画全体のタッチ同様の「骨太の一撃」を見舞われるのである。

ある時期の東欧の映画はどうしても製作当時の政治・経済情勢と切り離して語ることは難しい。この作品中にもそういった描写や人物の対比がはっきりと出てくる。さらに解説によると脚本執筆と公開時では、ポーランドの政治情勢が大きく変わったとの事。それにより今作が持つ批判力、挑発性のようなものが変質し薄れてしまったのだとか。
しかしそんな事象を差し引いても本作は純粋な1本の映画として強い「力」を持ち続けているといえよう。

全編にわたりBGMが入らない(一ヵ所だけ例外あり。このシーンでのオジェホフスキの所作がことに印象的)のだが、それを補って余りある丁寧で安定感のある画作り、そして疾走する汽車の音が力強い。