モールス

エロイカのモールスのレビュー・感想・評価

エロイカ(1957年製作の映画)
4.0
アンジェイ・ムンク作品観たさに「不運」のDVDを購入して、大変満足できる内容でした。二匹目のドジョウを当てにして、もう一本有名作である「エロイカ」も購入しました。
ストーリーは二部構成となっております。
第一部は主人公サヴィフトスキがワルシャワ蜂起を狙うレジスタントの一員でありながらも、力むわけでもなく風見鶏的に危機をスイスイと抜けていくコミカルな描写になっております。レジスタンスの訓練からは逃げ出す、ワルシャワに戻る際にドイツ兵に賄賂の与える、レジスタンスの任務を忘れて酒で酔っ払う等、戦争で緊迫した自国を嘲笑うかのように主人公が立ち振舞います。「不運」にも通じるところがありました。
第二部に入ると雰囲気は一変します。舞台はドイツの将校用の収容所となり、収監されてる人たちの生活ぶりをシリアスに描写してます。一見平和そうに見えますが、数年間抑留されてるストレスから殺伐としたものを感じ取れます。そんな中で将校たちの名誉は脱走となっており、先に脱走した将校はヒーローとなっていたのです。その人物こそが主人公サヴィフトスキだったのです。これにはカラクリがあり、そこにムンク監督の懐疑的な考え方が表れてます。
第一部は、ワルシャワ蜂起が絵空事であったと言わんばかりです。第二部では戦時の英雄論が虚無的であることを示してると思います。ムンク監督の視線は驚くほどに冷徹です。
ただ大戦中のヨーロッパ戦線の歴史背景を勉強する必要があり、アンジェイ・ワイダ監督作品と同様に勉強の必要があるのが難でしょうか?
とにかく、ムンク監督は冷徹な視線からユーモラスな表現に転換するのでハイセンスさは素晴らしいですよ。映像的にもラストの円形の小径 を回る捕虜たちの姿は、かなりインパクトがありました。
それ故に他国の映画ファンが理解し易いように少しだけ工夫もしてほしかったですね。
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