カツマ

プッシャー3のカツマのレビュー・感想・評価

プッシャー3(2005年製作の映画)
3.6
痩せた狼のような獰猛な瞳はどこへいったのか。それは裏社会に君臨してきた男の栄枯盛衰の末路。プッシャーシリーズのラストを飾る3作目は、麻薬組織の首領として静かなる殺意を放ってきたカリスマ、ミロが主人公だ。
狂犬のようなフランクを震え上がらせたかつての姿はそこにはなかった。我がまま放題の娘を甘やかし、胃腸の弱い子分どもに囲まれ、ついには若造から『あんたの時代は終わった』と宣告され、分かりやすい中年の危機を迎えた悲しき没落オヤジ、ミロ。
だが、枯れたオヤジの脳髄を刺激する怒りのボルテージは少しずつ上がり続け、ついにはあの不協和音のようなギターノイズが鳴り響き、プッシャーシリーズお馴染みの淡々とした狂気が待ち受けるのだ。

コペンハーゲンを裏で牛耳ってきた薬物組織の首領ミロ。だが、その威光は翳りを見せ、若者から舐められることも増えてきた。
とある麻薬取引でもヘロインを得るつもりが、別のヤクを摑まされ、取り引きは失敗に終わる。ミロはそのミスにつけ込まれ、厄介な依頼に足を突っ込んでしまうことになる。娘のヘレナの誕生日パーティを控えるミロにはパーティの50人分の料理を作ることと、厄介な依頼を同時進行でこなすという難解なミッションが待ち受けていた。

今作でも前2作の主人公フランク、トニー、どちらも登場は無し。しかし、1作目のラドヴァン、2作目のカートなど互換性のあるキャラクターの再登場は熱い。なかでもやはりラドヴァンの存在は強烈で、このプッシャートリロジー最恐の男の称号はラドヴァンに捧げたい。

追い詰められた主人公の溜め込んでいた狂気が最後には爆発して、地獄へとダイヴするかのように墜落していく、といういつものパターンだが、この3作目はグロ描写が過去最狂。ミロの作った不味そうな料理でも見ている方がまだ幸せだと思えるレベル。レフン監督の静かなるバイオレンスがはっきりと炸裂した作品でした。
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