まりぃくりすてぃ

ヘンダーソン夫人の贈り物のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ヘンダーソン夫人の贈り物(2005年製作の映画)
3.2
お年寄り(たち)が主人公のわりにはテンポよい。1937~41年頃の話を2005年の人たちが撮ってて、古臭さならぬ “新臭さ(あたらしくささ)” があったりしたらイヤだな、と警戒したが、そういう21世紀臭は少なかったみたい。
踊り子たちの悪くなさにモーリーン役の抜きんでた美麗さが加わって、(私個人は劇場支配人の補佐役のシャキ眉の女性もかっこよかったと思う…)全世代オトナ向けなおとなしめのポップさがまあずっと維持されたといえる。主役おばぁさまの限りある映えを、あからさまにその副ヒロインが補う、という王道には賛成も反対もしない。
途中、男の全裸に納得。(そこ少し感激。)

しかし、途中から混入され続けたヒットラー云々がかなりウザかった。モノクロ映像までぶっ込んで、「WWⅡだぞぉ~。トリュフォーとは違うけどぉ~」……まあ、そういう史実を基に、なのだとはわかりつつも、、
英+米+ユダヤ、に歯向かう者は20世紀にも21世紀にもすべて悪、というプロパガンダ映画にはとっくに飽きてるんだけど?
“真の世界平和のために映画には何ができるか”というチャレンジが本作にはまったくない。何のために2005年にわざわざ作ったのか意味薄。(2003年に英国はイラクを空爆。。)

大変に情感のあった後半のモーリーンと出征兵の接触(しっとりした歌 ──Will Young の All The Thing You Are に包み込まれて)を本当は気に入ってあげたい私なんだけど、「徒花としての名場面」としか。

この英国側ストーリーに、敵国のベルリンあたりの劇場関係者たちのストーリーを並行させて、最後にアフウヘーベン、してみる気はないのね?
スケール小さい。
哲学ぐらい学べ。

すべてを一方的にヒットラーとかフセインとかわかりやすい個人のせいにする。だから、同じこと(戦争)を何度も繰り返す。何がヒットラーを生んだのかを徹底的に理解しなきゃ。
結局、悪のナチスに米英が負けなかったことが20世紀最大の幸いで、イスラエル建国もひたすら福で、イランのいくぶん民主的だったモサデク政権を米CIAと英秘密情報部がクーデターで転覆させた1953年のやりたい放題なんて現代史にとってどうでもよくて、米英が国連決議を無視して「大量破壊兵器があるから」と言いがかりつけてイラク国民を200万人ぐらい殺しておいて「やっぱり大量破壊兵器はなかったみたい♡」でハイ終わりした謎の凶悪犯・米英を全然許しちゃえて、そんな米英にとって現在滅ぼすべき相手の筆頭であるプーチンを声だけ大きく悪魔呼ばわり(そのくせプーチンがなぜ悪魔なのかの客観的根拠を一っつも提示できない。「だって、メディアがそう言ってんじゃん」だけ)。
「ウクライナのアゾフら極右勢力がウクライナ市民を楯にして劇場地下にこもってロシアに抗戦し、追い詰められたらその劇場をアゾフらが自分で爆破して市民を多数殺しておいて、『ロシアにやられた。虐殺だ』と大宣伝。とんでもない自作自演」と私か誰かが言っても、米英ユに洗脳されてる西側脳の人たちは「頭おかしい」としか返さない。そのくせ、「ロシア軍がウクライナの劇場を爆撃した」ことの証拠をその人は一つも持ってない。「だって主要メディアがそう言ってんじゃん」の一点張り。そして米英がイラク空爆したことについて何も言わない。────という人たちにとって、味わうこと自体がルーチンっぽい、そんな娯楽映画だ。

モーリーンの相手役がトム・クルーズにちょっとでも似ていたかどうかはもう忘れた。