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893(ヤクザ)タクシーのshxtpieのレビュー・感想・評価

893(ヤクザ)タクシー(1994年製作の映画)
3.0
『勝手にしやがれ!!』シリーズの原点とも言える、やくざ人情コメディVシネ。俳優たちがやけにいきいきしている、黒沢清映画にしては珍しいもので、主演の豊原功補を筆頭に、森崎みどり、諏訪太朗(黒沢映画では端役が多いが、いい役者なのだ)、寺島進らが、はつらつとした演技を見せる。黒沢色は薄いものの、やけにだだっ広い、横広の田中タクシーの事務所の空間は、黒沢的としか言いようがない。また、透明なベール、舞い散る羽毛(前から思っていたんだけれど、これはジャン・ヴィゴへのオマージュ?)、段ボール、ゴミ袋、追いかけっこなど、黒沢映画に頻出する小道具や演出が見てとれる。誠二(豊原)が休業状態となった田中タクシーの事務所を訪れるシーンでは、誠二の足元に千切られた債権が吹き飛んでくる。このあたりの映像も、相当に黒沢らしい。ラストカットは、『勝手にしやがれ!! 英雄計画』にかなり近い。助監督のうちの一人は青山真治! 音楽は、なんと岡村みどりと岸野雄一!! 『 CURE 』の予兆がそこここに見られる、黒沢のすぐれたプログラムピクチャーの一例として、忘れがたい。黒沢の職人的な仕事を堪能できる。
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