えくそしす島

スノータウンのえくそしす島のレビュー・感想・評価

スノータウン(2011年製作の映画)
3.6
【笑顔の裏】

1992年-1999年にかけて、南オーストラリアで実際に起きた「スノータウン男女12人猟奇殺人事件」に関する書籍を原作とし、「ニトラム/NITRAM」の監督&脚本コンビが映画化、そして長編デビュー作でもある。
なるほど、ニトラムで感じたあの“滲み出た感情が絡みつくような描写“が既に出来上がっている。

監督:ジャスティン・カーゼル
脚本:ショーン・グラント

あらすじ
オーストラリアのスノータウンに住む16歳のジェイミーは、仕事を持たない母親と兄弟に囲まれ貧しい生活を送っていたのだが…。

私は怖いもの好きが生じて、過去に起きた凄惨な事件までをも調べたりする。我ながらなんと悪趣味なことか。

映画「コンクリート」の基になった
「女子高生コンクリート詰め殺人事件」

映画「冷たい熱帯魚」の基になった
「埼玉愛犬家連続殺人事件」

映画「凶悪」の基になった
「上申書殺人事件」

想像を絶する凄惨な事件は数あれど、あまりにもな内容だったが為に、私が最後まで読めなかったルポライター本がある。日本犯罪史上類を見ない事件。その影響力の観点から“報道規制"が敷かれ、映画「愛なき森で叫べ」の元にもなった

「北九州監禁殺人事件」

故に、“事件の詳細"は余り知られていない。

今作で描かれている「巻き込まれていく過程」を見て、その事件を思い出してしまった。"同じ笑顔を持つ者"同士、どちらも弱みに漬け込み、逃げ道を塞ぎ、痛みや恐怖、自責の念をも利用したマインドコントロール。

よく目に留まる
“実際にあった事件の映画化"

しかし、出来上がった作品の多くは「基にした」「着想を得た」という免罪符を武器に脚色の嵐。

もし、実際の現場を目の当たりにしたら
「あっちの事件の方が凄惨だよねー」「こっちの事件の方がグロいよねー」「大した事なかったねー」とは思わない、思えない。

映画を見てこの感想を抱くのならば、須く“作り物然"としているのだろう。安易な物語や描写での作品化自体が、被害者の尊厳を踏み躙っていると受け止められかねない。

だが、この題材を今作は真っ向からリアリズムのスタイルで描いている。それに比例して映画的な面白さは皆無、人物の説明や話の起伏も少ない、時間軸や相関図もこちらが察しなくてはいけない。でもこれでいい、これで十分だ。映画化にあたり実際にあった描写を控え目にしている部分はある。が、観る側の想像力を用いて描いてもいる。

「娯楽的になりつつある凄惨な事件」

脚色されていない内容だけならば、Wikiやノンフィクション本でいい。この題材を映像化するのなら今一度考える必要があるのかも知れない。

観る側の感情に何を伝え
何を訴えたいのかを