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スタンリーのお弁当箱のkaomatsuのレビュー・感想・評価

スタンリーのお弁当箱(2011年製作の映画)
3.5
感情表現が豊かで、器用に立ち回れる演技上手な子役というのは、昔からあまり興味がない。反対に、良くも悪くも自然体の、不器用な子役のほうが、なぜか好きだ。日本映画で言えば、古くは小津安二郎監督『お早よう』や、近年では是枝裕和監督『そして父になる』のように、無愛想でふてぶてしく、セリフもボソボソ、言わされた感が満載…そんな屈託のない子どもの演技を見ているほうが俄然楽しいし、愛着も湧く。

この作品の主人公である少年スタンリーの、とてもキラキラした目と、明るい笑顔。そのキャラクターが、あまりにも演技とかけ離れた、超・自然体なのには驚いた。カメラを前にして、どうやったらそんな天然の演技が可能なのだろうと、鑑賞後にパンフレットをめくってみたら、元々は映画撮影ではなく、映画のワークショップとして製作されたとのこと。最後まで撮影と気付かれずに、スタンリーの屈託のない笑顔をカメラに収めながらも、その健気な明るさとは裏腹に、インドの厳しい社会事情を対比させることで、真の「幸せ」について考えさせる、地味だが得難い作品だ。

ある事情により、お弁当を持って来られないスタンリーを助けようと、クラスメイトが一致団結する姿がとても清々しいのだが、お化けのごとく出没し、子どもたちの弁当を奪おうとする悪者の先生が、いかにもなキャラでリアリティに欠けるなぁ…と思ったら、演じていたのは、なんとこの映画の監督さん。子どもたちを演出しながらも、嫌われ役を相当楽しんでいる様子。さらにスタンリー役のパルソー君は、監督さんの一人息子だ。なるほど、自然体で活き活きした映画には、いろんな理由があるのだね。
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