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スタンリーのお弁当箱のkomoのレビュー・感想・評価

スタンリーのお弁当箱(2011年製作の映画)
4.2
いつもみんなを笑わせてくれる、クラスの人気者のスタンリー。家庭の事情でお弁当を持ってくることができないスタンリーに、友人たちはいつもお弁当を分けてくれる。
しかし陰険な国語教師はそれをよく思わず、スタンリーに厳しい言葉を投げかける。


この作品はなんと、出演者である子供たちに『映画撮影である』ということに告げずに撮影されたのだとか。
『映画のワークショップ』と聞かされ、真剣に取り組んでいた子供たち。おそらく休憩時間の表情すらもカメラに捉えられています。そのおかげで緊張感がなく、すべての表情が本物です。
監督は嫌な国語教師の役で、主人公のスタンリーは監督の息子さん。

良い意味で映画らしさがなく、ストーリーがどこへ向かおうとしているかわからないところが新鮮で魅力的です。
スタンリーがクラスの子を笑わせているシーンがひとしきり映ったあと、お弁当の時間になると外へ出て、水道の水で空腹を紛らわせている、切ない姿が映し出されます。

その後友人たちからお弁当を分けてもらえるようになるのですが、国語教師から『また人にたかりおって。弁当を持たない奴は学校に来る資格がない!』と理不尽に怒られてしまうスタンリー。
しかし当の国語教師も、なんと他の教師や子供たちの弁当をせびっていたのでした。
今世紀最大の『お前が言うなー!』です(笑)

友人たちがスタンリーを呼ぶ時の声が信頼に満ちていて微笑ましい。
英語の先生との作文を通した心の交流も素敵でした。しかも作文のご褒美としてもらったお菓子を友人たちと分け合うスタンリー…なんて良い子なの…(涙)

スタンリーがお弁当を持って来られなかった理由というのは、最後の最後で明かされます。そして物語が終わったあとのテロップで、インドの貧しい子供たちの境遇について言及されます。
ここまで見たかどうかで、この映画から読み取るメッセージは大きく変わって来るように思います。
そしてそして、スタンリーの最後の健気な行動に胸が温まるばかりです。

観る者の心が洗われるような子供たちの自然な笑顔を引き出すことに成功し、なおかつ社会への問題提起を主軸にしながら、スマートにまとめている本作。
挑戦的ですがしっとり温かく心に響く、良い作品だと思います。
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