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きっと、うまくいくのヨウのレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.7
オールタイムベスト級の作品と出会ってしまった。171分という長尺だがそんなのは全く気にならず、あっという間に終わった。時間を忘れてこんなにも鑑賞に没頭できたのは初めてかもしれない。コメディ、ミュージカル、ヒューマンドラマが混ざったような、ジャンルを超えた凄いつくりになっている。

ランチョー、ファルハーン、ラージュの親友3人組の大学時代と今を同時に描いていく手法がとても面白く、ストーリー構成がうまい。ところどころでインドのB級映画っぽさが出ているのも良い。機転を利かせて学長たちを翻弄していく三バカトリオが最高すぎる。特にスピーチのシーンはマジで笑いが止まらなかった。最初から最後まで痛快な気持ちにさせてくれた。
泣けるシーンも満載。お互いを思い合い、友のためにできることをする。互いに影響し合い、それぞれが自らの殻を破って自分自身で道を切り開いていく。このような登場人物たちの絆の深さがあらわれた、ジーンと感じる場面が多く、思わず涙する。

また、インドの教育問題の核心にも迫っている。学歴社会、競争社会の凄まじさ。親に決められたようなレールに敷かれた道のり。周りからの期待が膨らみ、成功しなければならないという圧迫感。そしてそれらに耐えられず自ら命を断つ若者たち。現実で起こっている教育事情がリアルに描かれていた。良い成績を取ることだけに執着し、学問をするということを考えない。学ぶことよりも他人の上に立つことを重要視されるこの社会構造はインドに限った話ではない。どんな場所でも起こっている現象である。
そんな間違った学びの姿に異議を唱えるランチョーは教育の本質をとらえた天才であった。我々みんなが彼の教育哲学からたくさんのことを学ばないといけないと思う。教育の視点からも観る価値がある作品である。
私自身、大学で教育学を専攻している人間であるので、この映画の内容はしっかりと頭に入れておこうと思う。ランチョーほど周りに多大な影響力を与えた人間を見たことがない。ランチョーという人物を崇拝する気持ちが高まるばかりである。もはやランチョー教を崇拝するまでになっている(笑)。

たくさん笑い、たくさん泣き、たくさん考えさせられる。一つの映画にこんなにもたくさんのものが詰まっているなんてアッパレの一言。自分らしく生きていくことの喜びを教えてくれ、人生に夢や輝きをもたらしてくれる素晴らしいインド映画。"Aal Izz Well”をモットーに、これからも明るく生きていきたいと思えた。ランチョー、ファルハーン、ラージュの3人の熱い友情が織り成す史上最高のエンターテインメントをたくさんの人々に布教していきたい。Filmarks400本目がこれで本当によかった。


「みんな競争に夢中だ。これで勝っても何の得が?知識が増える?ノーだ。圧力が増すだけ。
大学は圧力鍋とは違う。鞭を使えばライオンも芸をする。でもそれは訓練で教育じゃない。」
「逃げて。これは無料の忠告よ。」
「成功ではなく優秀さを追求しろ。成功は自ずとついてくる。」
「自分がなりたいものは心が教えてくれる。臆病になった時は胸に手をかざしてこの言葉を言うんだ。“"Aal Izz Well”(きっとうまくいく!)」
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