あゆみ

アンチヴァイラルのあゆみのレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
3.9
本当に何重にも気持ち悪い映画だった。セレブから抽出した病原菌に感染したい人は小綺麗なクリニックで好きなサンプルを買い、セレブの細胞入りの肉を食べたい人は街中のお店でお好みの人のを選んで量り売りしてもらう。カニバリズムに通じる発想自体も気持ち悪いけど、細胞でも、病気でも、コントロールと商品化が可能だという考えにすごく嫌な感じがした。セレブの一挙手一投足に熱狂してお葬式まで中継するような、クローズアップされる下世話な欲望も気持ち悪かったし、病気、病気、病気の描写ばかりで手を引っ込めたくなるような生理的な不快さもずっとだった。画面がとにかく白くて、その中でセメントよりシャツより白い主人公のシドの顔色が、ずっと白いんだけど本当に生き物じゃないみたいで時々ぞっとする。白い画面に血、口紅、スーツの黒が映えるんだけど、あと色味のあるものとして映るチューリップについて、チューリップの綺麗な色はウィルスによる品種改良の結果なんだよってわざわざ言うのも本当いやな感じだった。出てくる食べ物もサンドイッチとイカリングとか、白いにも程があった。

シドが肉感的な興味を示したのが、画面の中で助けを求める録画のハンナと、死後に細胞から再生されたハンナ(の部品)、ていうのに世界観が凝縮されてる感じがする。くり返される画面、永遠に変化しない肉体。ハンナはパッケージ化されているか、血に汚れていて今にも死にそうに弱っている姿でしか出てこない。徹底的に生気が排除されていて、生きている物は細胞や血液の姿でしか出てこない映画。最後にみんなが病原菌を買おうとしてる待合室に血まみれのシドがやってきて、みんなわらわら逃げる、ていう場面が、申し合わせて見えなくしてた物に急に牙を剥かれる感じがしてすごく皮肉だった。世界観に合うか合わないかの映画だと思うけど、冒頭から題字が出るまでの2分くらいで感じるものがあった人は全部見ても好きなシーンが見つかると思う。真っ白くてシルエットも美しいけど食べると血を吐いて死ぬキノコ、みたいな映画だった。