マレーネ・ディートリッヒの魅力を余すことなく映した作品。
大筋は古典と言うこともあって退屈、或いは白けてしまう部分もあるが、ディートリッヒの美貌と演技はどこを切っても良い。ドナウの漣を激しく弾く、仮面舞踏会で吹き戻し笛で男を誘惑する、瞳を猫のようにグルグル動かす、口紅を塗るディートリッヒ...なんか全部ディートリッヒのシーンだな。それ以外は、敵国ロシアのスパイを演じるヴィクター・マクラグレンがカートゥーンのキャラみたいな満面のニヤケ面を常に浮かべていて不気味だったことぐらいしか印象にない。
中盤に見せた変装はお見事。ディートリッヒだと分かっていたはずなのに、余りの変貌ぶりにそう気取られぬほどの名演技。
ジェニファー・ローレンスが演じた「レッドスパロー」の女スパイとはまた違った形の女の魅力。この頃の女優ってやっぱり凄い。
スパイ物としては抜け過ぎ。大らかな時代という言い回しがあるが、007やイーサン・ハントならまだしも真面目なスパイ物に大らかさがあっては困る。まあそれは時代だなあとしか言いようがないが。
