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愛のコリーダのryosukeのレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
4.5
@新文芸坐
ボカシががっつりかかっていたのは残念。ほぼほぼ濡れ場だし、画面のかなりの範囲を覆うこともあるので目立つ。無修正版も見直さなければならないだろう。
全体的に西洋人のオリエンタリズムをくすぐりそうな感じはある。
バッチリ決まった構図を長回しでじっくりと捉える映像は全編に渡り美しい。
鮮やかな赤が禍々しい雰囲気を増長させる。スタッフロールまで真っ赤。
始まって数秒で濡れ場でびっくりする。その後も徹底して濡れ場ばかりを描く。必然的に若干単調にはなるが、この徹底具合が当時衝撃だったのだろうか。実は合間合間の野外シーンもしっかりと美しいし、清涼剤のような役割を果たしている。
松田暎子はそんなに演技が上手いという訳でも無いようだが、(結構セリフ回しがわざとらしい)尋常ではない情念を発している。口元のアップが生々しい。
ゆで卵やら刺身やらのアイデアも生々しすぎる。
三、四歳の男児の股間を握るシーンなど今では絶対できないだろうな。
赤い虫が体内に入って来る云々の異常なダイアログも強烈。
女中が棒読みで「お嫁に行けなくなってしまいます」と言うシーンや老女とのシーンなど結構笑える描写も。
鏡に写る定の睨みつける顔と蝋燭、緑色の照明に妖しく照らされた裸体など印象的。
摩りガラス越しの画が美しい。風呂場で摩りガラスの向こうに女が見えるシーンはゾッとする。
ずっと寝床にいるので、時間が省略されて夜になったときに、カットが変わった瞬間に時間が飛んだようになるのも面白い。
幻想シーンも印象的。奥さんを殺すイメージが鮮烈に挿入されるシーンや、絞殺中の幻想による野外シーンなど見ていると、やはり日本のヌーヴェルヴァーグだなあと思わせられる。後者は移動撮影が用いられているが、作品を通して動きの少ないカメラワークの中だからこそ際立っている。これは小津の「麦秋」の移動撮影を見た時も思った。
「切断」シーンはやはり強烈。蓄積、増幅されてきた赤のイメージが最後の最後に爆発する。
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