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コンプライアンス 服従の心理のpanpieのレビュー・感想・評価

3.8
2004年にアメリカで起きた実在の事件を元にしている。
ファーストフード店が舞台。
流石アメリカ、金曜日は物凄く忙しい様だ。
その最中に事件は起きた。
前日に冷蔵庫の扉が閉まっていなかった為本部長には内緒で事を収めようとしていた店長サンドラは警察官から従業員が客の金を盗んだと電話を受ける。
19歳位の金髪の女の子が犯人だと言われ丁度店内にはアルバイトのベッキーがいた。
ダニエルズと名乗る警察官は今はベッキーの家を家宅捜索していて行かれないからとサンドラに命令する。
君がベッキーの服を脱がせて調べてくれ、と。
最初抵抗するがその度に言いよどむ事なく警察らしい適切な答えにサンドラは納得してしまう。
戸惑いつつもベッキーを全裸にし脱がせた服は証拠になるから袋に入れてサンドラの車の中へ持っていけと指示するダニエルズ。
その後更なる問題が。
店内は客でごった返し店は大忙しで誰も裸にエプロン一枚を着ただけのベッキーを監視出来る同僚はいない。
そしてダニエルズからの更なる指示が…



↓ここからネタバレあります。↓






胸糞すぎてため息が何度も出た。
こんな酷い事私は絶対にしない!と断言したいのだけど密室で電話からの指示、しかも相手が警察官を名乗る。
巧妙であり得ないのだけど相手が警察官と名乗ったら人間はこんなにいとも簡単に服従してしまうのか。
全米で同じ様な事件が70件以上あったという。
関わったそれぞれの人間が何かおかしいと思いつつも相手が警察官だと従ってしまう人間の心理を巧妙に操る犯人は銀行勤務のエリートだったという衝撃の事実。
しかも電話で営業している所を逮捕。
口が達者な筈だ。
やはりおかしいと思いつつ服を脱がせてしまった店長の責任は問われるべき。
監視カメラにベッキーがサンドラにこんな事やめてと腕を触れ懇願している様子が証拠として残っている。
それを聞いてないとシラを切るサンドラ。
本部長に連絡するなり警察に連絡するなり確認出来たのに頭から信じ込んでしまったなんて。
そこに冷蔵庫の扉が前日に閉まってなかった事を報告出来ていない罪悪感やそれを隠蔽したい心理も重なって発覚が遅れたことが本当に悔やまれる。
加えてサンドラとベッキーと他の女性の同僚とのお喋りでサンドラが外れるとベッキーが馬鹿にした笑いを陰で聞いていて若くて可愛いベッキーに元々ムカついていたサンドラ。
そういう感情が根底にあってのコレは事件を長引かせエスカレートさせたサンドラの心の黒い部分を炙り出している。
ミルグラム実験を思い出した。
心臓が悪い被験者に段々と電流を上げていく実験だ。
何故ナチスに人々は服従したか。
それと被る。


フォローしている方のレビューで知っていたけど内容から想像がついてなかなか観る事が出来なかった。
それなのにどうして観たかと言うと今作のクレイグ・ゾベル監督の最新作「死の谷」が近々上映されるから。
東京では既に上映されていると思うが何故か内容が聖書が元になっていると聞くと観たい気持ちが疼いてしまう。笑


「ボストンストロング」の監督デヴィッド・ゴードン・グリーンが製作総指揮している。


ベッキーの監視をこんなのおかしい、自分はやらないと放棄した同僚のケヴィンが事に及ぶのではと最初思ったが違った。
そこはよかったがケヴィンもおかしいと思いつつ調べようとしたら同僚に関わったらあんたもまずい事になるよと言われあっさり止めたりそれよりダニエルズは話を聞き出した後サンドラの婚約者ヴァンにやらせる事にする辺りから更に観るのが辛くなった。
その前にヴァンはサンドラに友達と飲んでくると電話をしていて酒が入っていてしかも目の前に裸の若い女の子を見させ折檻と称して触らせ後のシーンは映像として映さないがそれで十分に想像させて胸糞。
ヴァン役のビル・キャンプってなんかこういう役はまりすぎな気がする。
店長サンドラ役のアン・ダウドもはまり役だったがこの役で数々の映画祭で助演女優賞を取ったらしい。
だからといって素晴らしいと言える内容ではないしでも観ている側を十分に不快にさせる演出には唸る。
これが本当に70件もあったなんて終わっている。
考えたくないがこれは海の向こうのアメリカの話であって関係ないとは同じ人間なのだから言い難いし日本でも起きているのかもしれないと思うと更に胸糞。
もう二度と観たくはない。
でも観るべき映画だったと思う。
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