COZY922

アンコール!!のCOZY922のレビュー・感想・評価

アンコール!!(2012年製作の映画)
3.7
きっとたくさんのものを見てきたであろう 皺に縁どられた目が楽譜を追う、聴き手を見つめる。多くの人と言葉を交わしてきた口元から歌が放たれる。音楽や歌の持つ力が世代を問わず普遍的なものであることを喚起させられる。

音楽が家族や友との絆を再生し、偏屈な人間が音楽を通じて心を開く話は古今東西にたくさんあり、言わば使い尽くされた題材。なので既視感もあり展開も読めるし、ベタベタとも言える。演出もクサイ。が、それでも歌のシーンに強く感じ入るものがあるのは、自分が歳をとった時にこんなふうに目に輝きを持って歌えたらいいな、歳をとっても何か好きなことに夢中になれる自分でいられたらいいなと思ったからだろうか。”何か” は必ずしも音楽である必要はない。そう!映画を見て誰かと熱く、時にはしっとりと語り合うことでもいい。

合唱団が選ぶのがロック、ヘビメタ、ラップなど、合唱と聞いて通常思い浮かべる音楽と違うのがツボだったりもして、ベタだけどいい後味でした。あえて言うなら終盤の展開はやや強引だったかも。あくまでも自分の好みだけど、マリオンへの追悼の意を汲んだとしても、アーサーがソロを歌うことの説得力は無かったように思う。むしろ、ソロパートの無い構成で1人1人が彼女との思い出を込め全員で歌い上げる歌だと更に良かった。

もう1つ惜しむらくは邦題。原題は「Song for Marion」US公開時の題は「Unfinished Song」。個人的に好きなのは「Unfinished Song」(未完成の歌)。

歌はその時その時の思いを乗せて歌ってはじめて完成し、時が違えば同じ歌もまた違ったものになる。そういう意味では歌はいつまでも未完成と言えるのかも。名付けた人の意図は知らないけれど、そんなふうに思った。