あまのかぐや

アンコール!!のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

アンコール!!(2012年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

あっさりと短い映画でした。 このところ大作とよばれる上映時間も2時間越えは普通な映画ばかりみていたので、この作品の潔さに驚きました。内容も結末も「あらすじ」どおり、予想通りで、なんの捻りもない。老夫婦の長い長いこれまでの人生も、妻の病気を越えてきた過去も(たしか「再発」と言っていました)、息子親子(息子はシングルファザーです)との確執も必要以上に描かれていません。キーパーソンのマリオンの死でさえあっさり過ぎるほどあっさりと(「え!?今、死んだ?!」ぐらいの) 淡々と水のように流れる簡潔な物語の中に、どうしてこれだけ心が震えたのか、今になって不思議な気持ちになっています。 細かな説明なし、泣かせようという演出なし、なところでほんのりと伺えるこの夫婦の絆。「絆」なんてこっぱずかしくて口にできるか、っていうアーサーの人柄のごとく、ほんのりと。 これはひとえに夫アーサー役のテレンス・スタンプと妻マリオン役のヴァネッサ・レッドグレーヴの力でしょう。 テレンス・スタンプの「生きにくそうな」頑固じじいの演技はまぁ想像できちゃう範疇でしたが、その中に現れる妻に寄せる気持ちですな。言動は非常に自分本位で「こんな頑固じじい、いや!」って思わせちゃうのに、病床の妻をケアするナチュラルな優しさが行動にでるんですよ。これだけでこの夫婦が過ごしてきた長い人生が伺えるほど、自然にそこに思いやりがある。 ネタバレになっちゃいますが(知らないで観た方がいいでしょう)中盤でマリオンが歌う「True Colors」。決して上手い歌ではではないのです。それでも震える手がしっかりとマイクを持ち、しっかりとアーサーを見つめて一言一言歌詞をかみしめるように歌う姿が堪らなかった。泣かせる演出といったらここぐらいかな?でもあざとさを感じる前にマリオンの神々しいほどの存在感のほうが勝っていて、とてもいいシーンでした。 尺が長ければよいというわけではなく、ストーリーがこっていればいいというわけではない。素晴らしい俳優のきめ細かい心が入った素晴らしい演技があれば、そこに素晴らしい作品ができて然るべきなのですね。 ただ「泣ける」というだけでなく、本当に心の深いところに触れてくる映画。 「泣ける」だけ選んじゃったけど、本当に合うイメージワードがないなぁ。