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クレージーホースのpikaのレビュー・感想・評価

クレージーホース(1973年製作の映画)
5.0
開始数分で傑作の匂いしかしなく、最後まで全くブレないまま貫かれて最高だった。徹頭徹尾純粋で何もかも飲み込んでしまう愛がホントに凄い!
あのエマニュエル・リヴァが!?な扱いは確かにひどかったけどよくぞここまで、っつー体を張った女優魂は圧巻!
ドロン似のイケメンと髭の五万歳コンビが超最高!で、裕福で見た目も美しくお洒落な男と見すぼらしく汚らしい小男の出会い、友情を凌駕する尊敬や愛情の表現が端的に直接的で画的にもメッセージ的にも隅々素晴らしい。
無駄ゼロで全秒見応えしかなく名シーンと衝撃的な珍シーンに覆われた大傑作。やべーこれ。

見た目だけではなく内面、文字通り中身さえも愛おし慈しむ愛みたいなのが凄くて、ラストの衝撃シーンの味わう表情なんかも猟奇性は全くなく、ただただ純粋な愛でしかないっつーのが素晴らしい。
排泄物すら芸術的に、なんてドヤったものではなく、友情だろうが愛情だろうが愛する相手のものは排泄物すらも同様に愛おしいものであるみたいな同列な表現だったり、弱肉強食ではなく食物連鎖としての生物の営みだったり、生きるとは、幸せとは何かみたいな突き詰められたシンプルな哲学性がたまらなく素晴らしい。

母息子の歪んだ愛憎表現は興味深いし、苦しみとは裏腹な息子の純真さなど面白いが、それらを細かく紐解いて解釈するよりも目の前のことを味わうこと自体に価値のある作品だった。
キリスト教に対する「愛」とは何かっつー問いかけとか、批判にも見えかけないスレスレなところだけど、批判してるのは盲目的な教会に操作された教徒なのだろうか、人から教えられるものではなく本当の意味でのキリストの語る愛ってものをもう一度よく考えてみてはいかがだろうか、みたいな、宗教も超えて人間という括りも超えて、生物の持つ愛っつーもんを掘り下げまくるセンスがマジハンパねぇ!

無痛分娩とか蟹とネズミなんかのところは突飛過ぎて不可思議だけど、そんな程度で不可思議と思えてしまう親切設計なシュールレアリズムであるので、非常に見やすくシンプルな作品だった。とは言えアラバール監督が意図したものを間違いなく受け止めたとは思えないので見る度深く考えていきたいと思う。
何度も見たい、大好きですこれ。
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