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サラゴサの写本のROYのレビュー・感想・評価

サラゴサの写本(1965年製作の映画)
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17世紀のスペインを舞台に繰り広げられる夢の論理をそのまま視覚化したような迷宮感覚

ポーランド貴族ヤン・ポトツキが著した奇書『サラゴサ手稿』の見事な映画的翻案60年代ポーランド映画界を代表する多彩な俳優陣の競演で魅せる、摩訶不思議な幻想絵巻。

世界の映画人を魅了した究極のカルト作。枠物語の氾濫が織りなす、出口なき迷宮世界!

■ABOUT
ナポレオン戦争時代のスペインはアラゴン地方サラゴサ。とあるフランス軍将校が、逃げ込んだ宿屋で挿絵入り大判本を発見する。その後宿屋へ入ってきた敵方のスペイン軍将校は、フランス軍将校を捕縛する代わりにその書物を翻訳して聞かせ…。

■NOTE I
原作は、旅行家考古学者・民俗学者として活躍したポーランド貴族ヤン·ポトツキ(1761年〜1815年)がフランス語で執筆し、1804年から1805年にかけてサンクトペテルブルグで秘密出版された小説『サラゴサ手稿』(工藤幸雄訳、国書刊行会/ただし抄訳)。

同小説を巧みに映画用に翻案したのは、作家/映画テレビ脚本家/コメディアン/ソングライター/演劇評論家など多彩な領域で活躍したタデウシュ・クフャトコフスキ(1920年〜2007年)。

ナポレオン戦争時代のスペインはアラゴン地方サラゴサ。とあるフランス軍将校が、逃げ込んだ宿屋で挿絵入り大判本を発見する。その後宿屋へ入ってきた敵方のスペイン軍将校は、フランス軍将校を捕縛する代わりにその書物を翻訳して聞かせてやる。著者はスペイン軍将校の祖父であり、ワロン護衛隊の司令官だった……。

それより何十年も前のこと。シェラモレナ山脈を旅していたスペイン軍将校の祖父アルフォンス(ズビグニェフ・ツィブルスキ)は、ムーア人王女姉妹、カバラ修験者、ジプシーらと出会い、彼らから奇々怪々な話の数々を聞かされる。その多様な物語群は、次第に絡まり合い、互いに関連し始めるのだった……。

監督のヴォイチェフ・イエジー・ハスは、歴史的・政治的主題ではなく、個人の心理や超現実的世界を好んで探求した“ポーランド派”世代の異色監督である。オリジナル音楽を手がけているのは、ポーランド現代音楽を代表する作曲家クシシュトフ・ペンデレツキ。

当初英語圏では短縮版が公開されたが、その後、ロックバンド“ザ・グレイトフル・デッド”のジェリー・ガルシア、マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラら本作を賞賛する人々の資金提供により、全長版(183分)の修復がなされた上に新たな英語字幕が付され、1999年に再公開された。その他ルイス・ブニュエル、デイヴィッド・リンチ、ラース・フォン・トリアー、ペドロ・アルモドバルら、『サラゴサの写本』に魅せられた映画人は数多い。とりわけ、めったに同じ映画を繰り返し観ないブニュエルは、本作を気に入ったあまり三度観たという。

■NOTE II
トリュフォーの『逃げ去る恋』で、主人公ドワネルが、列車で再会した初恋の人コレットに、『恋のサラダ』に続く自分の2作目の小説の構想を語る場面がある。その小説のタイトル「悪童手稿 Le Manuscrit trouvé au Sale Gosse」が、実は「サラゴサ手稿 Le Manuscrit trouvé à Saragosse」のもじりなのである(ちなみに、『サラゴサ手稿』はもともとフランス語で書き上げられた。その後、そのフランス語の原稿の一部が紛失してしまうなど、いろいろあって、『サラゴサ手稿』はテクスト・クリティック的にはいまでもさまざまな点で議論されているようだ。ポトツキが書いたかどうか疑わしいという説もまだくすぶっているようである)。

https://pop1280.hatenablog.com/entry/20070604/1181047605

■NOTE III
『Cineaste Magazine』のレビュー記事を“抄訳”してみました。(https://note.com/roy1999/n/n8f8960c62132)

■ADDITIONAL NOTES
2014年の「ポーランド映画祭」で上映されてましたね。@イメフォ

何重にも入れ子になっていく前半の物語が、外枠から一気に閉じていく後半。

英題『The Saragossa Manuscript』
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