【記憶の間に間に】
スタジオジブリ作品。望月智充が監督を務めた90年代青春作品。
〈あらすじ〉
高知県で平凡に暮す高校生の杜崎拓は、東京から転校してきてきた武藤里伽子のことがつい気になってしまう。そんな中、2人はひょんなことで東京へ旅をすることになる…。
〈所感〉
最高。こういうのをエモいと言うんですね。
ジブリで最も知られてないであろうマイナーな作品を見たくてDVD鑑賞。結果面白すぎて、特典映像の本作の制作に携わった若手クリエイター達の今だから明かせる打ち上げトークみたいなまで見てしまった。鈴木敏夫プロデューサーが彼らに絶大な信頼を置き、チャンスを与えたのもわかるし、宮崎駿大巨匠の心に火をつけたのも頷ける。まず、舞台である高知のロケーションが最高で、自分にとっては全く知らない土地だけに、天神大橋ま高知城も全てがみずみずしく新鮮に映った。でもなぜか懐かしい感じ。主人公の杜崎はそこから修学旅行でハワイに行ったり、上京して東京に移ったりするが、結局地元が一番愛すべき場所なのが伝わってくる。そして、杜崎やヒロイン武藤の何気ない会話やファッションからなんとなく今や失われた平成を回顧してしまう。あのレンズがぼやけた気だるげな時代はもう終わってしまったのか。そんな感すら受ける。杜崎のあの頃の淡い感情は実は恋だったのか、と彼自身のモノローグで語られるが、実際は色々な物が思い出の中で混濁して溶け合って見つけ出した言葉が恋だったのだと思う。グラデーション塗れの記憶は初恋というフォルダを自動的に作ってしまう。正直自分は武藤みたいな自由気ままで自己主張が強すぎる女は逆立ちしても好きにならないだろうな、とカッコつけてしまう。でも、実際彼女みたいな人が学生時代近くにいたら、ああ好きだったんだなぁと杜崎のように思い返すのかもしれない。男って馬鹿だからさ、やっぱり美人がいいんだよ。杜崎のように水着姿の盗撮写真だって買う…いやいや、それは越えてはいけない一線だろ!杜崎はまぁイケメンでファッションもオシャレで女の子の扱いも心得ていてめちゃくちゃモテそうだが、この世界ではフツメンという。ひょんなことからホテルで同部屋となった武藤を気遣って、わざわざ風呂場で寝るほどの紳士なのだぞ。こいつマジで紳士すぎだろ。男も惚れるわ。なのに、武藤からも親友の松野からも殴られるの理不尽すぎる。あの時は悪かったなぁ!ですまんよ。自分なら一生許さん!って思っちゃいそう。金ローでなんでやらないんだろう?ああ、でも酒飲むシーンとか盗撮写真とか生理とかそりゃ今のコンプラ的にダメか。たくさんの人に見てほしい作品なのに勿体無い。良い意味でジブリらしくない、大好きな作品になりました。締め方もなかなか見ないタイプでこりゃたまげました!