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武士の献立のmatchypotterのレビュー・感想・評価

武士の献立(2013年製作の映画)
3.5
《侍の映画》、Vol.14。『武士の献立』。

加賀藩、今の石川県。
前田利家が築いた100万石の豊かな大地。

外様大名最大級のルーツと、加賀藩に起きるいわゆる“加賀騒動”を背景に、雄大で、ゆったりとしながらも、仄かに物騒で。

そこで刀を携える武士、ではなく、刀は携えてはいるが仕事場は台所の“包丁侍”。

と、その“包丁侍”の息子を一人前にして欲しいと父親に懇願されて嫁いだ料理の腕と味覚に優れまくった年上女房。の話。

この包丁を持つシーンの高良健吾と上戸彩は、実際に調理している。
この手際の良さが伝わる演技。
「幼き頃から生まれ育った料亭で包丁さばきを身につけた妻」
「大名の台所番として、現役のプロの料理人」
これを、演じるってすごい。

もはや、手に職持つ匠の技の領域の出立ち、振る舞い、所作。

凛としててめちゃくちゃカッコいいし、めちゃくちゃ美味しそう。
料理は江戸時代の加賀の郷土料理がメインなので、今風のガッツリ系ではなく、自然の風味や季節を感じるところもまた良い。

明日葉の天ぷら、めっちゃ美味そう。

西田敏行、舟木伝内。
実際の人物らしく、加賀藩で料理の本、つまり当時のレシピ本みたいなのも残す大名お抱えの料理人。

この人の料理、包丁に賭ける志。
刀が武士の魂の世の中で、刀ではなく、包丁で、料理で世の中を見て、変え、その志を残そうとする真っ直ぐな思い。

それが息子の高良健吾に伝わった“包丁式”。
このシーンの厳かな雰囲気、迷いのない所作。
演技のレベルを超えた何かが乗り移ってるのかと思うほどの再現性。

ただ、みんなで料理を作ってワイワイ楽しい映画、と言うわけでもない。
お互いがそれぞれどこか割り切れない気持ちを持っていて、やりたいこと、それができないこと、色んなやるせなさが漂う。

若き武士の生き様と苦悩もあれば、アットホームな家庭風景もあれば、香りを感じれそうな立ち上る湯気と美味しい料理もあれば、時代劇としての激動のうねりもある。

1本の映画で、食を通して色んな顔を覗かせる映画。

この監督、『釣りバカ』シリーズとか、山田洋次監督の映画の脚本描いてたりする人なのかな。

その辺も、慎ましさや、お茶目さや、由緒正しさ、など、真っ直ぐに生きようとする普遍的な庶民の心を描くうまさ、松竹らしさ。

ずっと入ってきてとても素敵。

上戸彩、同年代の永遠のヒロイン。
気丈に振る舞ってるけど、弱いところもある的なこういう役、ハマり過ぎる。キュンキュンさせてもらった。
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