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武士の献立のodyssのレビュー・感想・評価

武士の献立(2013年製作の映画)
4.0
【まとまりのよい佳品】

時代劇ですが、斬り合いは出てきません。加賀藩の若い包丁侍(料理役、高良健吾)が、料理上手な年上妻(上戸彩)を迎えて、それまでしぶしぶやっていたお勤めに本気で取り組むようになり、というようなお話です。

加賀藩のお家騒動の話も出てくるのですが、そちらはあくまでサブ。メインは料理を通じて若い二人が心を通い合わせていく過程、そして包丁侍としての仕事を全うすることが藩のため、つまり公のために尽くすことにつながるのだと主人公が納得していく過程なのです。

昔、私も金沢に旅して、加賀藩の侍の役目一覧が記載された表を見たことがありますが、侍ってサラリーマンなんですよね。それぞれにお役目があって、その役を果たすことが平和な時代の侍の生き方だった。現代のサラリーマンが総務課や営業課などでそれぞれ働いているのと変わりないのです。ただ、職分がある程度お家ごとに固定されているところが違いますけど。だからこれは、江戸時代のサラリーマン物語なんですね。

脚本はよくできており、料理だけだと2時間持たなかったでしょうが、お家騒動が組み込まれているので適度な緊張感もあって、まとまりのある佳作に仕上がっています。

もう一つの見どころはクライマックスで、徳川将軍家からのお客を迎えて饗応するところでしょう。一番膳、二番膳、三番膳、四番膳、五番膳・・・・と次々料理が客の前に並べられるところが圧巻というかド迫力というか、すごいなと感心してしまいます。でも、いくら大食漢でもあんなに食べられませんよね。残った分はどうするのかなあ。こういうところが気になってしまうのは貧乏性だからか(笑)。

キャストは全般的に適切。女優も、ヒロインの上戸彩をはじめ、成海璃子、夏川結衣、余貴美子とそれぞれが持ち味を出していますが、私としてはまず夏川結衣さんのあいかわらずの色っぽさにほれぼれ。うーん、熟女の魅力がたまりません。それから成海璃子さんも、今までは現代物に出ていて、不必要に怒り顔をさらす場面が多くて、なんかうまく使われてないなと思っていたのですが、今回の役は脇役ながら魅力がよく出ていました。こういう使い方をしなきゃ彼女の持ち味は出ないんだな、と納得。

でも、時代劇なんだから、「愛する」なんて言葉を男女間で使わせちゃいけないな。いくら現代的な感覚の時代劇でもね。年寄りの繰り言かも知れませんが。
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