ベルナルド・ベルトルッチ監督の訃報を知り、今日はベルトリッチ作品を観なければならないという衝動に駆られ急遽鑑賞。
過激な性描写と聞いて構えていたが、そうでもなかった。名前や素性を明かさない身体だけの関係を描くのであれば性描写が主流になるのは自然なことだと思う。構図や画が綺麗で生々しくはなかったが、多少レイプ感が否めなかった(特に後半)。イタリアで上映禁止になったのは キリスト教の禁忌にあたる描写として意図的に扱っていたシーンがあったからかなぁなんて思ったり。
全体を通して、男性からみた女性の謎ということが強調されていたと感じた。これについては、主人公が「あと200年生きたとしても、それか宇宙のことがすべて分かったとしても、君のことは永遠に分からないだろう」という趣旨の言葉を妻に語りかけるシーン諸々から窺い知ることができた。
あと主人公である男性は苦しい現実から逃避するツールとして、女性と謎めいたシチュエーションでの関係を持っていたのに対し、女性側は名前も知らない同士で逢瀬を重ねるというミステリアスかつロマンチックな関係に心惹かれていたのだと考えた。そして時間が経過し最終的に相手に執着するのは男性側だったことが、さらに現実的だと思った。女性側の、相手に対する情や未練も丁寧に描かれていたところがこれまたリアル。
ストーリーの結末は嫌いじゃなく、むしろパリが舞台の映画を観たという満足感を存分に味わえた。
ベルトリッチ監督作品のお部屋に漂う退廃美とノスタルジー、加えてフィルムのがさついたノイズの質感が好き。もう少し過去作追いたい。