Maririri

おとぎ話みたいのMariririのレビュー・感想・評価

おとぎ話みたい(2014年製作の映画)
4.0
どうしようと思った時には心はいつもどうしようもなく、足りないと思うということはかつて満ち足りていたものがあったという証左にほかならないのだが、いつも不在だけがその人の輪郭をかたどるように、今私が手にしているものなど何もない。
もう時間はなく、私は若くないのだな、と思う。相手のために何だってしてあげたいという気持ち同様に、相手のために引き裂ける時間というものの、その上限が、喉元に迫って初めて、そのあまりの手遅れに気づくのだ。私が彼のためにしてあげられることが、もはや何もないということが、そのまま断絶を意味してしまう。私の愛だけが、関係性の全てだったのだ。
いつでも捧げてる、という誓いだけが宙ぶらりんになっていく午後の、この時間すら、おとぎ話のように包まれてゆくことの、悲しみよ。

趣里さんが語る初めと終わりの台詞。
時の経過を経て聞くと同じ台詞だが気持ちの機微は全く異なる。

山戸結希監督の書く台詞は詩のようだ。句読点で区切られる言葉の集まり方に情景と感情か詰まっている。
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