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エリジウムのrollinのレビュー・感想・評価

エリジウム(2013年製作の映画)
5.0
ロサンゼルス 2154年
レプリカントは完全に撤廃され、地上は汚染されたスラムと化していた——

完璧なまでにマット・デイモンそっくりな子役が、星を見上げている。
彼が見上げているのは、シド・ミードがデザインした超富裕層御用達のコロニー、エリジウム。
本作は、ニール・ブロムカンプ監督がシド・ミード参戦以降の、デザインの工業性=リアリティに敬意を払って作られたSF映画や、ゲーム、漫画に至る名作の数々へ宛てたファンレターでもあるのでがんす。

そして監督がリアリティを追求するのは自らの作家性への責任でもあると思うし、同時に強化外骨格やドロイド、クルーガーの宇宙船レイヴンに、エアバースト弾や電磁シールド、チェム・レールガンといった浪漫要素を屈託なく作品世界へ登場させるための禊。(本作の設定資料集は、一家に一冊!SFファン失禁&必携の書です!)

レトロなデジタル表示やインターフェースは言わずもがな、既存のプロダクトから未来のガジェットを創造するSF作法の正統なる踏襲、魔改造されたGT-Rやレミントンをぶっ放す主人公マックスの姓はもはやロカタンスキーやし、無骨無残なエクゾスケルトンスーツ(カワサキ・フレーム)を移植されて後、彼は臆することなく正義を行う覚悟をススメていく。

映画の中で初めて殺されたジョディ・フォスターと、初めてジョディ・フォスターを殺したシャールト・コプリー演じるクルーガーのニンジャ厨っぷりと見事な顔面崩壊。
敢えて利己的な側面を強調された敵キャラも魅力的やし、だからこそマックスの親友フリオを演じたディエゴ・ルナ(a.k.a.キャシアン・アンドー)が見せる掛け値無しの友情はとても印象的。

空想を科学の楔で繫ぎ止めた監督の誇り。伝統のサンプリングという恩恵を受けつつ、この時代に新たなスタンダードを生み出そうとする情熱。そんなん大好きしかないやん。

不寛容方式の世界が2154年に始まった訳ではないことは、今を生きる誰もが知ってる。この天才監督がメインストリームで劇場長編映画を製作できない不寛容な現状は耐え難いけれど、星はもうすぐ手の届きそうな場所に、いつでもありますよ!
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