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攻撃のかのレビュー・感想・評価

攻撃(1956年製作の映画)
5.0
これは戦争映画として最高峰のものだと思う。

映画の舞台となる作戦そのものは、大勢に関係なさそうな小さい話なのだが、人間的な意味ではとても深みのある作品。

主人公が身体がズタボロになりながら魂だけで生きながらえ、執念の先に向かったのは敵軍ではなく味方の隊長のところという皮肉。「地獄に落ちてもいいからこいつを殺したい」言うが、その状況が既に地獄である。

アルドリッチは善にも悪にも評価的な解釈を与えず、徹頭徹尾冷静なまなざしで人間を見つめている気がする。

もう一つアルドリッチがすごいのは、印象を操る手腕を持っていながら、「表現」に傾かないように、ちゃんと映画の内容に馴染むように照明やカメラの演出がなされているところ。階段から主人公が降りてくるところ、大きすぎない影にそう感じた。

蓮見先生は、あの隊長が「最初から最後までずっと悪い、ニュアンスを欠いた悪役」として気に入らないと言っていたが、ああいう軍隊に向いていない人間が保身のために上手く立ち回って上官になってしまう現実が、わたしには悲しくてグッときた。
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