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I AM/アイ・アム 〜世界を変える力〜のRのレビュー・感想・評価

4.1
こないだ見たライアーライアーの監督トムシャドヤック、他にどんな映画を作ってるのだろうとフィルモ見てみて、一番最近のこの作品に興味をそそられ見てみた。細かい部分で気になることはあるけど、全体としては大変興味深いNew Age的エンパワーメント系ドキュメンタリーやと思った。コメディ映画の監督として90年代に大成功を収め、物質的豊かさを目一杯享受してるのに、何かが違うと感じながら暮らしてた彼は、ある日、自転車事故に遭い、後遺症のため長期間凄まじい苦痛を経験する。その後、どうしても死ぬまでに発信なければならないことがあると気づき、それを基に一つの作品にしたのがこれ。世界の何が間違ってしまったのか、世界を良くするために私たちは何ができるのか、という大きなテーマにそって、科学者、文学者、哲学者、宗教家などへのインタビュー、自然の美しい姿、アニメーションなどなど組み合わせ、対立や闘争ではなく、共感と調和こそが人間の一番強い本能であると喝破する。それは自然の中にも普通に見られる当たり前のことだと。確かに考えてみるとその通りだ。動物は争ってる姿の方がショッキングやから印象に残りやすいけど、普段はみんな平穏に調和してるじゃないか。ダーウィンも著作『種の起源』の十数年後に書いた『人間の由来』の中で、適者生存という言葉は2回しか使っていない。一方、愛という言葉は95回も使っているのだとか。さらに、民主主義も自然の中にしっかりと見られるうえ、哺乳類には共通の黄金律がちゃんと存在し、それは他人が望むことをせよ、であるらしい。また、人間の共感力のパワーは強力で、人々が助け合ってる様子を見ると、感動して脳内でエンドルフィンが分泌され高揚感が得られる、しかし、ネガティブなエネルギーにさらされた場合、脳の機能が抑制され、思考力が低下する。などなど、これまだ序盤で、他にもいろんな面白いお話が出てくる。特に印象に残ったのが、驚異的なほど素晴らしい人格者であるシャドヤック監督のお父様の御言葉。日曜教会の礼拝時に人種や年齢などに関わらずお互いを祝福し合うときは涙が出るほど感動するのに、家に帰って次の日になるとその時のことなんか全く忘れてしまう、と。人は悲しいくらい忘れてゆく生き物である。一体どうすれば、ひと時もその感動を忘れずに生きていけるのだろうか。監督は、汝を愛するように隣人を愛せよ、あなたの敵を愛しなさい、のキリストの言葉を引用して、これを世界に広めようとするとみんなにおかしな目で見られる、と語る。後半では、問題の解決として、具体的で実用性のある考え方を展開してる。とても感動的で、映画的カタルシスも加わって涙があふれた。僕個人としては、やっぱ人間はどんな生物とも異なる不思議なニュートラルさがあるなと思ってて、当然DNAにいろいろデータが刻まれててそれによってある程度の偏りを見せるのだとは思うが、どの傾向をより大きく生活の上に発現させるかは、個人と環境との関係の仕方によるんだろうなと思ってる。これは監督も表現してる通り、関係の仕方は自分で意識的に選択することが可能なのだ。だったらプラス傾向のスイッチを入れた方がいいに決まってる。世界にとっても、自分にとっても。ただ、ちょっとだけむむむ…となったのが、ヨーグルトの実験のとこと、ランダムな数字に規則性が出るってところ。実験とかシステムの詳細がまったく分からないので、かなり信憑性に欠けるなーと。ここはもう少し時間かけてでも詳しく掘り下げるか、もっと説明を加えるかした方がいいんちゃうか、と思った。ただ、全体としては非常にインスパイアリングやし、これ見て生き方がほんの少しでも変わる人もひょっとしたらおるんちゃうかな、と思った。特に、日本は、ニューエイジ的な思想やマインドフルネス的なモノとか欧米ほどポピュラーじゃないので、かなり新鮮に見れ、感動する人が多いんじゃないでしょーか。ボクは大学生に哲学を教えてたりもするので、その一環として本作を見てディスカッションしたりするのは相当アリやなーと思った。また見たい。ってか買っとこかなこれ。ちなみに、ボク個人としては、塵も積もれば山となる、よりも、地殻変動を起こして峻岳が屹立する、みたいな方が好きですが笑 善きことはカタツムリの速度で動く、も真実やけどね。まぁどんな視点で見るかだよね。けどどっちにしろ結局人類は、個人レベルにおいて宇宙的に生きることでしか、さまざまな問題の真の解決を望むことはできないのではないか、と思ってます。それを自他ともに可能にしていくことこそ、我々が生きるべき道なのではないだろうか。
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