このレビューはネタバレを含みます
ストーリーという意味ではそこまでハマりはしなかったが、3DCGの面ではどハマりした作品。
殆どコミカルな演出がなかった本作にあって、唯一笑ってしまったのはエンドロールに『トリさん 福田彩乃』の文字を見つけたとき。
物真似かい!と。笑
以下は、CG制作面でのコメント。
本作のアニメーション制作を担当したのはMARZAさん。設立は2005年でセガのCG映像製作部門が独立した形。その為、本作までは主に系列ゲームのオープニングムービー等を担当されていたそう。
そんな同社にとって本作は初めての長編フル3DCG作品で、様々なチャレンジがあった事がCGworldさんのインタビュー記事から見受けられた。
本作ではコンセプトアートを前編にわたりつくり、イメージの共有を徹底したそう。また、荒巻監督がメカデザイナー出身という事で本作で多くを占めた機械周りのデザインについても厳しくチェックが入ったとの事。
結果的に、背景の戦艦やフルCGで作られた都市の全景などはディテイルまで含め見応えがあり、格好よく、圧巻であった。
キャラクターの動きはモーションキャプチャで作られた為、全体的にアニメというよりも実写に近い印象を受けた。
クオリティが非常に高く、ダークヒーローの格好よさが十二分に引き出された大作だったと思う。
MARZAさんの最新作でルパン三世the firstがあるが、あれに比べて違い、見劣る部分をあげると、色味へのこだわりかなと感じた。
本作でも全体の色味を俯瞰してみるカラースクリプトが用意されたそうだが、殆ど使われなかったとの事。ライティングとリアルな質感によって、すべてのシーンが美しく作られていた一方、色としてのストーリーは感じられなかった。
一方、ルパン三世では山崎監督の下、リアルな質感の上に、アート的な色味が付加され、青や赤、黄色にシーンの色が統一されて色としてのストーリーが感じられた。
キャプテンハーロックは2013年の作品だが、ルパン三世を公開した2019年までの6年の間に、
CG長編の制作フローを確立させ、モデルや質感に磨きをかけ、そこに色味という新たな強みを追加し、世界に向けた作品を作っている同社の、会社的な向上心とチャレンジ精神を強く感じさせてもらった。