イチロヲ

愛のぬくもりのイチロヲのレビュー・感想・評価

愛のぬくもり(1972年製作の映画)
3.5
研究に没頭している中年の学者(仲浩)が、自由奔放な娘(田中真理)との出会いをきっかけにして、家庭崩壊の危機に直面してしまう。堅物の中年男と奔放なヒッピー娘の交流劇を描いている、日活ロマンポルノ。

音楽担当が鏑木創の変名ということもあり、「野良猫ロック」の主題曲が流用されている。おそらく未使用の別テイクかと思われるが(間違っていたらスマン)、ファズギターが唸りまくるサイケデリック・ロックを堪能することができる。

肝心の本編ドラマは、谷崎潤一郎・著「痴人の愛」と大同小異。「新しい性意識をもつ娘に隷属する歓び」を説きながら、リベラル精神の深層に迫っていく。学者の妻(南条マキ)もまた学生(森竜二)と肉体関係をもつという、王道パターンが踏襲されている。

本作の優れている点は、田中真理演じるヒッピー娘の生い立ちを開示しないところにある。風のように現れた現代娘の魅力と妖力が濃縮されており、「深層では束縛を欲している」というモチーフが逆転劇を際立たせている。
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