何故か言うのは難しいけれど大好きな映画というのがたまにあって、つまりこれがそうだ。
現代版キャッチャーインザライ、なんていう大したキャッチコピーが付いていたから観たにすぎないのだけど(別にサリンジャー的要素は感じなかった)好きな映画で、でも何でかはよく分からない。
繊細な若者が集まって限られた時を過ごして、大人になっていく過程が描かれる。
登場人物は主人公を含め、深い過去や複雑な現在を抱え、でも今を悩みながら全力に生きていく。そうして次第に大人になる。ドラッグや友情や恋やセックス、そうした誰もが経験するであろう事柄を通して。
若者のナイーヴな内面を感覚的に描くのが上手い映画なんだろう。
監督は原作小説の作者でもあるチョボスキー。自分で書いた作品を自分で映画監督出来るなんて羨ましい限りだ。
この映画が大好きな要素として俳優陣の素晴らしい演技は欠かせない。ゲイでちょっと大人な高校生を演じてくれたエズラ・ミラー、主人公が恋して憧れるも常に恋愛に傷ついている高校生を演じたエマ・ワトソン。
正直、ここでエマ・ワトソンかと。ハリーポッターで大スターとなったエマはスターに付き物のゴージャスな配役が多く、一般的な高校生を演じるには相応しいとは思えなかった。
しかし、しかし、エマの高校生の配役にしては大人びて美しすぎる感じが逆に手の届かないイメージを作りあげておりキャスティングとしては成功だった。ショートでもかなり短いヘアスタイルがよく似合い、恋する内気な主人公チャーリーの視線を一瞬で釘付けするに足る圧倒的な美貌。これは好きになるのも納得で、ため息が出るレベルである。
エマもこれまでの肩の力の入ったスター的演技ではなく自然体でラフな演技をしてくれて、新たな演技の幅を見せつけてくれた。主人公が勉強を教えてあげてそれが実ったシーンだとか今日だけは1番好きな人になってあげるって言ってくれるシーンだとか、綺麗だけどちょっといけ好かないエマ・ワトソンのイメージを覆すナチュラルにドキッとするワトソン。エマ・ワトソン恋したいなら観とけ映画、もはや。
主人公はトラウマによる幻覚を抱えていて、それがちょこちょこ謎要素小出しで出てくるのだけど正直必要である要素かは疑問であった。確かに若者特有の脆さや虐待のトラウマなど描きたいという気持ちは分かる、分かる、分かるけどゴッドヘルプザガールでも書いたけどあまり好みではない。
主人公が読んでる本の1つがアイン・ランドの「水源」である。日本では知名度が低いけどやはり欧米では有名なんだなぁ。