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ガーゴイルのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ガーゴイル(2001年製作の映画)
4.1
 アメリカから新婚旅行でフランスに来た一組の新婚夫婦シェーンとジューン。一見ごく普通の新婚旅行にも見えるのだが、夫シェーン(ヴィンセント・ギャロ)の様子がおかしい。一方でフランスで医師を務める黒人男性とその妻は、妻のある病が元で、彼女を自宅軟禁状態にしている。別々の夫婦の物語を平行して描きながら、やがて両者が一つの線で結ばれる。台詞を極端に排した映像世界が独特な雰囲気を醸し出す。冒頭の8分間である殺人事件からそれを隠蔽しようとする黒人男性の存在が描かれるが夫婦の間に会話らしい会話は一切無い。およそ8分間、映像のみで物語が語られる。一方の新婚夫婦の方も、夫は妻の話に相づちを打っているものの、確信に触れるような会話らしい会話は一切無い。ただSEXの時に男が見せる異常行動の中に物語の本質が隠されているらしい。観光旅行中の妻の緑のストールが風に飛ばされる様子や、ある研究所で彼の脇にあるメーターが異常に作動したり、どこか不穏な空気を醸し出している。

 今作は21世紀のドラキュラの恋愛物語である。新婚旅行中の夫と自宅に軟禁されている妻の間にはかつてある接点があったことが物語の中盤で語られる。この物語の中では直接触れられていないが、彼ら2人の不貞が、おそらく黒人医師の逆鱗に触れ、何らかの形で表に出たのだと理解した。だからこそラスト30分のヴィンセント・ギャロとベアトリス・ダルの再会の場面は、もっと丁寧に描写しても良かった。階段をゆっくりと降りて来る血まみれのベアトリス・ダルの姿の素晴らしさ。その後唐突に再会の場面は細切れにされ、不完全燃焼の形で提示される。クライマックスで餌食となってしまった女性がある意味一番哀れだった。殺人映画史上、あそこまで殺されるタイミングがゆっくりなのはある意味例がないかもしれない。2組のカップルの物語の中に、突然伏線として挿入され、伏線にも関わらず、やがて物語の中で大きな起爆剤となる哀れな女性を、フロランス・ロワレ=カイユが実にリアリティのある演技で表現している。ある意味、トリシア・ヴェッセイよりもベアトリス・ダルよりも、端役のフロランス・ロワレ=カイユの哀れさの方にぐっと感情移入してしまう。