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選挙2のBaadのレビュー・感想・評価

選挙2(2013年製作の映画)
4.0
作品としてのまとまり、完成度は前作「選挙」の方がありましたし、見ていて面白くもあったのですが、日本の民主主義のダメなところはより顕著に出ているのが「選挙2」。見ても自分の投票行動は変わらなかったと思いますが、見ていたら開票結果を見た後の後の狐につままれたような気分は味あわずに済んだかもしれません。

これから見る人で前作を見ていない人は、見る前に前作を見たほうが楽しめると思いますが、選挙権を得たばかりでどう使っていいか分からない、というような方は、近くで上映していたら、これだけでも見ればなにか役に立つかもしれません。

この映画のハイライトの撮影中止の申し入れのシーンは前作からの事情をパンフレットでよむと、申し入れた側の気持ちも何となく分かるのですが、それでも通らないことを通そうと国際映画祭に出品している監督のカメラの前で、明らかな言論封殺行為となる言葉を言えてしまうというその場の空気。それに末端の運動員だけでなく、本来理性的で優秀なはずの候補者まで染まってしまっているという現実は怖いですね。

一方で、地方選挙の問題点をカメラの前で訴えたり、しっかり自己アピールしたりする候補者もいて、撮影の時点ですでに監督のカメラがメディアとして意識されていたということもおもしろかった。

実際このとき撮影された映像はとんでもない時期になって編集されてこの作品になったわけですが、そのあとの後日談等をネットで調べると、撮影時点でカメラができることをキチンと把握できていたかどうかでいろいろなことが違ってくるものだということも実感できたりします。いやはや大変な時代(われわれ一般庶民には良い時代?)になったものです。

登場人物の山さん一家は本当に人柄がよくて見ていて和みますが、この一家の奇跡的なバランス感覚があってのこそのこの映画ですよね。

撮影場所が東京のベッドタウンの川崎市宮前区、選挙が行われたのが福一の事故から一ヶ月もたっていない4月ということで、今の日本の解決できていない課題の根っこのところが分かる映画になっています。

(夏の参議院選以前に見たかった 2013/10/5記)
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