歌代

マジック・マイクの歌代のレビュー・感想・評価

マジック・マイク(2012年製作の映画)
3.9
社会にうまく馴染めず、姉の家に居候している青年・アダムはひょんなことから昼は起業家、夜はストリッパーをする男・マイクと出会う。
即座に素質を見抜かれたアダムは出会った日にストリッパーとしてデビューし、すぐさま店の人気ダンサーとなる。
一転して楽しい人生を手に入れたアダムだったが、やがて歯止めが効かなくなっていき…。

ステージに立っていくことで自信を得ていく序盤は、跳び方は違えど『千と千尋の神隠し』の千尋が仕事をしていくうちに無意識に表情がいきいきとしていくような。
マイクと親友になっていって2人が楽しそうにしている姿は『ブギーナイツ』の中盤のような。
そして、最後はこれまた跳び方は違うんだけど『トレインスポッティング』のような気持ちになりました。

男性のストリップショーを扱う映画は初めて観たのですが、コレがめっちゃかっこいい!!!!
マッチョ映画苦手(ストーリーやキャラ以外の、作り手のマッチョ感ですら苦手)な僕ですが、前半は意外なほど嫌悪感を感じず、一気に引き込まれました。
それって多分ステージにおけるプロ意識に惹かれたんだと思います。
この映画は「パフォーマーとしてのストイックさ」みたいな描写は抑えめですが(むしろ見方によっては前半もやりたい放題やってるだけにしか見えないのかな)、それ以上にステージでの動きを見たらプロ意識は充分感じれると思います。

そもそも実在する「プロ意識」を思い返してみると、そういうものだよなあと。
それを言葉にしがちだし、それは全く悪くないんだけど本質は「ステージ(現場)の完成度」のためにあるもので。
少なくとも僕にとってこの映画のステージは、その背景を感じ取るには充分だったし「ステージを舐めてないパフォーマーたち」としっかり映りました。

マイクとアダムの違い。
それは「線引き」なのかなと感じました。
店の人気者となって、3ヶ月前とはまるで別人のように楽しい生活を手に入れたアダムは、薬物の売人となり、どんどん歯止めが効かなくなっている。
一方6年前からストリッパーをやっているマイクは将来の夢に向かいながら仕事としてストリッパーを割り切っています(でも仕事を楽しんでるし好きだと思います)。
「仕事」という線引きを持ったアダムは、ハッパより危ないモノは多分手を出してないし、遊びも社会的にはズレてるけど線引きを持っている。
完全に夜の住人にはなっていないんです。
だからこそ仕事に対して最低限のプロ意識を持ってやっている。
どっちつかずの中途半端だからこそのラストの決断なわけだけど、それでもストリッパーとしての彼の矜持(言葉にはしてないが)がカッコいいなって思えました。

あとソダーバーグ作品は編集が見やすくて好きです!
歌代

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