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人魚伝説のblacknessfallのレビュー・感想・評価

人魚伝説(1984年製作の映画)
3.6
主人公のみぎわは小さな漁村で夫と漁をする海女として幸せな生活を送ってた。
そんなある日、みぎわの夫は原発誘致反対派の人間が電力会社の殺し屋に殺害させるのを目撃する。
電力会社はみぎわの夫も殺害、殺し損ねたみぎわに夫殺しの罪を被せる。
みぎわは原発誘致、夫殺しに関わった者達への復讐を誓う。

80年代の映画だけど劇画が原作なせいか、テイストが70年代の映画っぽい。
夫の友達の村長の息子はみぎわと関係を持ちながら裏切り、最終的に彼女を殺そうとしたりとドラマもかなりドロドロしてる笑
男(=権力)に徹底的に凌辱された女性の凄絶な復讐劇なのが梶芽衣子さんの"さそり"シリーズや"修羅雪姫"を想起する。
実際、性的な凌辱に血みどろのバイオレンスを見せ場の持ってくる構成なんかもそっくりなんだよな。

でも、こちらは女の怨念や反体制的なことより幸せを奪われた女性の哀切に力点を置いていて夫を失ってからのみぎわの絶望に多くの時間を割いてる。若干、まどろっこしい笑
それと舞台の三重県の美しい海の描写も力が入ってる。利権のために美しい自然が失われる不条理を訴えるようにも見える。

それでもクライマックスの誘致記念パーティー会場である原発に乗り込んで、夫殺しの共犯者達から原発関係者、政治家から電力会社職員達を片っ端からモリで突き殺していく無双シーンは怨念と血飛沫が派手にスパークして圧巻!
虐げられ続けた者の復讐の念の凄まじさがよく出てた。

何気にスプラッターとゴアは全編気合いが入っていて、彼女を狙うヒットマンと全裸で格闘しドスで刺しまくるシーンも血の雨が降る地獄画図。
みぎわの艶かしい肢体が赤く染まっていく様に圧倒された。

監督の作家性とエンターテイメントがほどいよいバランスのパワフルな良作。ストーリーの突き抜け方もあってカルト臭も強い笑
好みのやつだった笑

それと「原発のために電力会社が人殺しまでするわけない、リアリティーがない」的なことを言ってる人もいるけど、それはあまりに無知で鈍感だと思う。
自分も東日本大震災以前ならそう思ったけど、東電の被災者に対する冷酷非道な対応を知った今となっては、「電力会社なんだし、殺るだろ当然」てなったね。
この先見性もこの映画の凄みの1つだよ。
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