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ビル・カニンガム&ニューヨークのkunicoのレビュー・感想・評価

4.5
ビル・カニンガム。
20ドルの青い作業着を身に纏い、自転車でNYの街を疾走しながらオシャレなニューヨーカーにカメラを向ける80歳。

彼の持つ信念にインスパイアされまくる、とってもフレッシュな一本でした。
とにかく仕事に対する姿勢がかっこよすぎる(そもそもご本人はそれを仕事だと思っていない)
「写真を撮ることは仕事では無く喜びだ」と断言するビルを見て、何てハッピーな人なんだ!と感動。
このスタンスってもはやアーティストだと思う。

こんなに楽しそうに仕事をする人がいるのか。
仕事以上にビルはこのNYという街で生きることを最大限に楽しんでいる。
カメラを構え行き交う人にシャッターを切りまくる彼は驚く程の満面の笑み。
少年がクワガタでも捕まえた時の様な、好奇心溢れる眼差しで人々のファッションを楽しんでいる。

ビルの掟、don't touch money. freedom is the most expensive.
震えた〜!金を貰わなければ自分の仕事に口を出されずに済む。仕事、すなわち自分の喜びをお金を理由に誰にも邪魔させない。
それってもの凄いプライド。

ランチなんてどうでも良いと言い放ったり、写真に夢中になってイエローキャブに自転車に乗ったまま突っ込んだり、写真に、ファッションに一直線な姿は見ていてかなり刺激的だ。

更には自分の軸が全くブレないところも魅力的。
他人のお金で着飾る芸能人には見向きもせず、ショーを見に行ってもチェックするのは多くの女性が着られる服か否かということ。
一部の人間だけで完結するファッションではなく、それを一つの文化として捉え、発信していく唯一無二の存在だ。

そんな彼が周りに与える影響はとても大きい。
先日鑑賞した「The September Issue」←もはや邦題で呼ぶことを放棄。笑 に出てきたVogueの鬼編集長アナ・ウィンターまでもが「NYの人たちはビルの為に服を着ているのよ」と言う。
そして印象的なのが、誰もがビルに写真を撮られた時のことを鮮明に覚えているのだ。
思い出すだけで興奮してしまうくらい、彼らの人生に特別な瞬間をもたらしている。

更に興味深いのは、彼の撮影対象がストリートファッションに留まらず社交界やパーティの場まで多岐にわたること。
これは単純に場面によって異なるトレンドの歴史を記録しているだけでなく、社会を平等に切り取る彼の視点を感じる。
それは正に彼の人柄にも表れていて、見終わる頃にはすっかりビルの虜になっていた。

だって、写真を撮るセンスもだけど言葉選びのセンスも抜群なんだもん!
お茶目なじいさんがユーモア一杯のセリフを言ってると思えば、キレッキレなアーティスト・ビルが顔を出してcoolとしか言えない言葉を投げてくる。

それでもそんな今の彼がいるのは、当然ながら彼の「過去」があるからで。
それに関して言葉で直接感情が語られることは少ないけど、そこはもう私たちで感じなければいけない。
1人の人生を垣間見て得たものは少なくない。
自分のしていることに誇りを持って取捨選択をする、そして幸せを噛みしめる!
とても良い刺激になりました、さんきゅービル!